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北鎌フランス語講座 - 文法編「分詞と分詞構文」

分詞と分詞構文

過去分詞が助動詞 avoir または être と組み合わさる用法については「助動詞」のページを参照してください。このページでは、それ以外の用法について解説します。
このページで取り上げる用法は、基本的には英語と同じですが、少し違う部分もありますので、相違点はどのあたりか考えながらお読みください。
なお、分詞構文の従属節の部分を「分詞節」と呼ぶこともあります。

概要

1. 用法

分詞と分詞構文の用法は、基本的に英語と同じです。

分詞動詞の半形容詞化(動詞が半分だけ形容詞化したもの)。
形容詞的に直前の名詞に係る。前後にコンマはつかない場合が多い。
分詞構文分詞の副詞的用法。副詞的に文全体(一語で言うと主節の動詞)係る
前後にコンマがつく場合が多い。

分詞は、名詞に係るので形容詞に似た働きをしますが、目的語を伴いながら(目的語を引き連れて)名詞に係るという意味で、動詞的な働きも失っていないため、半分だけ形容詞化しているといえます。

2. 分詞・分詞構文への変換

再帰代名詞の項目でも表にした動詞 éloigner を例に、受動態を経て、分詞・分詞構文に展開してみましょう。

1.基本的な使い方éloigner A de B「A を B から遠ざける」
2.受動態A est éloigné de B「A は B から遠ざけられる」
3.分詞A éloigné de B「B から遠ざけられる A」
4.分詞構文A, éloigné de B, …「A は、B から遠ざけられて...」

1. éloigner は第5文型をとる動詞で、「éloigner A de B (A を B から遠ざける)」という使い方をします。A が直接目的(OD)、B が間接目的(OI)です。
2. 受動態にする場合は、直接目的(OD)しか受動態の主語にはなれません。そのため、「éloigner A de B 」の A を受動態の主語にします。 A の後ろで動詞を être + p.p. にし、「de B」はそのままくっつけます。 A が単数とすると、être は3人称単数 est となります。
3. この est を省くと、過去分詞(éloigné)だけになり、そうなると「éloigné de B 」の部分が直前の A に係る形になります。
4. 「éloigné de B 」の前後をコンマで区切ると、分詞構文になります。

3. 性数の一致

現在分詞はつねに無変化です。それに対して過去分詞は

  • 分詞として使う場合は、直前の名詞に性数を一致します(形容詞の性数の変化と同様)。
  • 分詞構文として使う場合は、主節の主語に性数を一致します。

現在分詞・過去分詞の形(作り方)については、「動詞の活用編」の現在分詞過去分詞の項目を参照してください。

分詞の意味と用例

1. 意味

現在分詞は「~している」という意味しかありませんが、過去分詞は次の表のように 3 通りの意味になります(他動詞の過去分詞は 2 通り)。

 現在分詞(1)~している能動態・現在
 過去分詞 自動詞(2)~した能動態・過去
 他動詞行為を表す(3)~された受動態・過去
状態を表す(4)~されている受動態・現在


2. 用例

 (1)「~している」(現在分詞)

  le portefeuille contenant cent euros (100ユーロ入っている財布)

「portefeuille (財布)」は男性名詞、「contenant」は他動詞 contenir (含む)の現在分詞、「cent」は数詞で「100」、「euros」は名詞「euro (ユーロ)」の複数。
分詞以下が直前の名詞に係っており、「contenant cent euros」はカッコに入れることができます。
これは、次の文をベースにした表現です。

  Le portefeuille contient cent euros. (この財布には100ユーロ入っている)

この文は、文の要素で分けると、「Le portefeuille」が主語(S)、「contient」は contenir の現在(3人称単数)で動詞(V)、「cent euros」が直接目的(OD)。逐語訳すると「この財布は100ユーロを含んでいる」。
この動詞を現在分詞にすると、上のような直前の名詞に係る表現になります。

 (2)「~した」(過去分詞)

  la pomme tombée par terre (地面に落ちたリンゴ)

「pomme (リンゴ)」は女性名詞。「tombée」は自動詞「tomber」の過去分詞「tombé」に e がついた形。これは直前の名詞「pomme」が女性単数なので、それに合わせています。「par」は英語の by に相当する前置詞。「terre (地面)」は女性名詞ですが、無冠詞になっています。これは「par terre」で「地面に(床に)」という熟語なので無冠詞になっています。
これは、次の文をベースにした表現です。

  La pomme est tombée par terre. (リンゴが地面に落ちた)

「est tombé」は être + p.p. ですが、「tomber」が場所の移動・状態の変化を表す自動詞なので、être + p.p. で受動態ではなく複合過去になっています。さらに「過去分詞の性数の一致」により、主語(La pomme)に合わせて過去分詞(tombé)に女性単数の e がついています。
この文から助動詞(est)を取ると、上のように分詞が前の名詞に係る表現になります。
このように、ベースになっている文で être + p.p. が受動態ではなく複合過去の場合は、助動詞を取り払った場合も、受動態ではなく能動態・過去の意味になります。

 (3)「~された」(過去分詞)

  la ville détruite par la guerre (戦争によって破壊された町)

「ville (町、都市)」は女性名詞。「détruite」は他動詞 détruire (破壊する)の過去分詞 détruit に e がついた形。これは直前の名詞「ville」が女性単数なので、それに合わせています。「par」は前置詞で「~によって」。「guerre (戦争)」は女性名詞。
これは、次の文をベースにした表現です。

  La ville a été détruite par la guerre. (町は戦争によって破壊された)

「a」は助動詞 avoir の現在(3人称単数)。「été」は助動詞 être の過去分詞。この「a été」の部分は avoir + p.p. で複合過去になっています。さらに「été détruite」の部分で être + p.p. (受動態)になっています。つまり、avoir été + p.p. は「受動態の複合過去」の形です(英語の have been + p.p. に相当)。なお過去分詞 détruit に e がついているのは、過去分詞の性数の一致により主語(ville)にあわせた結果です。
この文から助動詞(a été)を取ると、上のように分詞が前の名詞に係る表現になります。
このように、ベースとなる文で avoir été + p.p. (受動態の複合過去)となっている場合は、助動詞を取り払った場合も、受動態・過去の意味になります。

 (4)「~されている」(過去分詞)

  le livre composé de cinq chapitres (5つの章で構成されている本)

「livre (本)」は男性名詞。「composé」は他動詞 composer (構成する)の過去分詞。「cinq」は数詞で「5」。「chapitre (章)」は男性名詞で複数の s がついています。
なぜ「composé」の後ろに「de」がついているかと言うと、この動詞が
  composer A de B (A を B で構成する)
という使い方をする動詞だからです。この A が直接目的、B が間接目的なので、受動態にする場合は A を主語にし、
  A est composé de B (A は B で構成されている)
となります。この例で言うと、次のような文になります。

  Le livre est composé de cinq chapitres. (この本は 5 つの章で構成されている)

この文の助動詞(est)を取り去ると、上のような分詞が前の名詞に係る表現になります。この場合は、過去分詞で「受動態・現在」の意味になります。

 (5)「~している」(過去分詞)

過去分詞でありながら、上の表の(1)の意味になる場合もあります。それは、ベースとなる文で再帰代名詞が使われる場合です。

  l'enfant assis sur la table (テーブルの上に座っている子供)

「enfant (子供)」は男性名詞。「assis」は他動詞 asseoir (座らせる)の過去分詞。「sur (~の上に)」は前置詞。「table (テーブル)」は女性名詞。
「asseoir (座らせる)」という動詞は、再帰代名詞と一緒に使うことの多い動詞で、「s'asseoir」で「自分を座らせる=座る」となり、実質上、自動詞的な意味になります。
このように、再帰代名詞と一緒に使って、実質上、自動詞的な意味になるタイプの動詞の場合は、結果的に上の表の(1)の意味になります。

分詞と形容詞の識別

形容詞の中には、語源的に動詞の現在分詞または過去分詞からできた形容詞が、かなりの数、存在します。
この場合、分詞か形容詞か、見分けがつきにくくなることがあります。
例えば、次の 2 つの表現を比較してみましょう。

1. une question intéressante (興味深い問題)

2. une question intéressant la jeunesse (若者達の興味を惹く問題)

「question (質問、問題)」は女性名詞。「jeunesse」は「若者達」という意味の女性名詞で、集合名詞(=単数形でありながら、実質的に複数のものを指す名詞)です。
「intéressant」は、「興味深い」という意味の形容詞もありますが、他動詞で「intéresser (~の興味を惹く)」(直接目的は「人」がくる)の現在分詞の可能性もあります。

現在分詞はつねに無変化のはずです。上の 1. では、女性名詞の「question」にあわせて「intéressant」に女性単数 e がついており、変化しているので、これは形容詞です。つまり 1. は「興味深い問題」となります。
これに対し、2. は直前の名詞が女性名詞なのに一致をしていません。これは現在分詞だからです。つまり、「intéressant la jeunesse」の部分は、
  intéresser la jeunesse (若者達の興味を惹く)
という表現がベースにあり、これが直前の名詞に係っているわけです。つまり 2 は「若者達の興味を惹く問題」となります。

この例では、たまたま直前の名詞が女性名詞だったから見分けがつきましたが、男性単数の名詞だと見分けがつきません。また、過去分詞だと、形容詞と同様に一致をしてしまいます。
2. の場合は後ろに「la jeunesse」という目的語が来ているため、こうした目的語の有無で見分けられそうな気もしますが、形容詞でも de または à を介せば後ろに言葉を伴うことができ、動詞も間接他動詞だと de または à を介して目的語を伴うため、やはり見分けがつかなくなってしまうケースが出てきます。

もし外見上で見分けがつかず、分詞か形容詞かどちらか迷ったら、分詞と見なし、元の動詞に戻して意味を取るようにしてください。

分詞と分詞構文の書き換え

 1. 分詞は関係代名詞 qui を使って書き換え可能

この項目は、関係代名詞のページを見てから、また戻って読んでも構いません。
さきほど「用例」で挙げた例文を、関係代名詞を使って書き換えてみましょう。
基本的に、さきほど挙げた「ベースになっている文」の動詞の前に関係代名詞 qui を入れ、助動詞を補えば、同じ意味に書き換えられます。

(1) le portefeuille contenant cent euros (100ユーロ入っている財布)
  = le portefeuille qui contient cent euros

(2) la pomme tombée par terre (地面に落ちたリンゴ)
  = la pomme qui est tombée par terre

(3) la ville détruite par la guerre (戦争によって破壊された町)
  = la ville qui a été détruite par la guerre

(4) le livre composé de cinq chapitres (5つの章で構成されている本)
  = le livre qui est composé de cinq chapitres

(5) l'enfant assis sur la table (テーブルの上に座っている子供)
  = l'enfant qui est assis sur la table

関係代名詞も、直前の先行詞に係るため、分詞を使った表現と同じ意味になるわけです。

 2. 分詞構文は接続詞を使って書き換え可能

分詞構文は、次に説明するように色々な意味になりますから、どの接続詞を使って書き換えるかは、分詞構文の意味次第となります。

なお、分詞や分詞構文は言葉数が少なく、切り詰められた簡潔な表現であるため、文章でよく使われます。
関係代名詞や接続詞を使ったほうが、言葉数が多くなるとともに意味が明確化され、耳から聞いたときに理解しやすくなるため、会話では主に関係代名詞・接続詞が使われます。

分詞構文の形と意味

分詞構文は、文頭・文中・文末のいずれの位置にもきます。
さきほどの「la ville détruite par la guerre (戦争によって破壊された町)」という語句を使って、分詞構文の文を作ってみましょう。

  文頭  Détruite par la guerre, la ville n'existe plus.
  文中  La ville, détruite par la guerre, n'existe plus.
  文末  La ville n'existe plus, détruite par la guerre.

ne... plus」は「もう... ない」。「existe」は exister (存在する)の現在(3人称単数)。
何通りかの訳が可能ですが、上の「文中」のタイプを訳してみると、

  「その町は、戦争によって破壊され、もう存在しない」
  「その町は、戦争によって破壊されたので、もう存在しない」

このように、従属節(「détruite par la guerre」)を主節(「la ville n'existe plus」)に、どうつなげるかによって、複数の訳が可能になる場合が少なくありません。
分詞構文というのは切り詰められた簡潔な表現であるため、数通りに解釈が可能だからです。

一般に、分詞構文は英語と同様、いくつかの意味に分けられます。

 (1)付帯状況、単純接続「...しながら」「そして...」

これは、従属節と主節のつながりが最も「ゆるい」タイプです。
さきほどの「破壊され」という訳は、「破壊され、そして」と解釈すると、「単純接続」に近いといえます。
接続詞 comme (英語の as)、et (英語の and)などで書き換え可能です。

 (2)時(同時・継起)「...とき」「...してから」

これは(1)と境界線が曖昧です。「同時」は上の「付帯状況」と似ており、「継起」(続いて起こる)は上の「単純接続」に似ています。
さきほどの「破壊され」という訳は、「破壊されたあとで」と解釈すると、「継起」の感じになります。
接続詞 quand (英語の when)、après que (...したあとで)などで書き換え可能です。

 (3)原因・理由「...なので」

これは頻繁に見られます。さきほどの例の「破壊されたので」がこれに該当します。
接続詞 parce que (英語の because)、comme (英語の as)などで書き換え可能です。

 (4)譲歩・対立、仮定「...だが」「もし...」

それほど多くは見かけませんが、文脈によっては、従属節と主節のつながりが譲歩・対立や仮定に解釈可能な場合もあります。
接続詞 quoique (英語の though)、alors que (...なのに対し)、si (英語の if)などで書き換え可能です。

 (5)結果「その結果...」

これは必ず「文末」にきた場合だけです。例えば、

  Une guerre a éclaté, faisant des milliers de morts.
      (戦争が勃発し、多数の死者を出した)

「a」は助動詞 avoir の現在(3人称単数)、「éclaté」は éclater (勃発する)の過去分詞。avoir + p.p. で複合過去。「faisant」は faire の現在分詞。「faire」は「する」というのが一番大きな意味ですが、〔事件・事故などが〕死傷者などを「出す」という意味でも使います。「millier」は「約千」で、「des milliers de ~ (数千の~、多数の~)」という熟語。「morts」はここでは名詞「mort (死者)」の複数形。
この文は、例えば「多数の死者を出しながら、戦争が勃発した」とは訳せません。「戦争が勃発し、その結果、多くの死者が出た」という意味です。(3)の原因・理由と逆です。
接続詞 de sorte que... (その結果...)などで書き換え可能です。

 Ayant (Étant) + p.p. の場合

助動詞 avoir + p.p. つまり複合過去がベースにある表現です。「Étant」になるのは、場所の移動・状態の変化を表す自動詞の場合です(理論的には「再帰代名詞と一緒に使う場合」も「Étant」になるはずですが、この表現で再帰代名詞がつくことは、普通はありません)。

複合過去がベースにあるため、
  「完了」(...し終わって)
の意味になります。この場合、前置詞 après (英語の after )を使って、
  Après avoir (être) + p.p.
で書き換えることができます。

この「完了」の意味に「原因・理由」が加わり、
  「完了 + 原因・理由」(...し終わったので)
という意味になることもよくあります。例えば、

  Ayant fini mon travail, je suis allé au cinéma.
      (仕事が終わったので、私は映画を見に行った)

「fini」は他動詞「finir (終える)」の過去分詞。「travail (仕事)」は前に「mon」がついているので、男性名詞だとわかります。「suis」は être の現在(1人称単数)。「allé」は自動詞 aller (行く)の過去分詞。aller は「場所の移動・状態の変化」を表す自動詞なので、être + p.p. で複合過去です。「cinéma」は「映画館」で、「aller au cinéma」で「映画を見に行く」となります。

ジェロンディフ

  • en + 現在分詞」で作ります。
    現在分詞を使った分詞構文と同じですが、会話でもよく使われます。
    上の(1)~(4)の各意味になりますが、文章中に出てくる場合は、「~しながら」のほか、
      「~することによって
    という訳を覚えておくと便利です。

  ⇒ 例文(諺)

  • ジェロンディフの前に tout がつくと、「譲歩・対立」の意味になります。

  Tout en sachant la vérité, il ne pouvait rien faire.
      (真実を知っていながら、彼は何もできなかった)

「sachant」は savoir (知っている)の現在分詞。「vérité (真実、本当のこと)」は女性名詞。「pouvait」は pouvoir (~できる)の直説法半過去。「ne... rien」で「何も... ない」。「faire」は他動詞で「する」。

絶対分詞構文

英語の「独立分詞構文」と同じで、もともと主語の異なる 2 つの文を、やや強引に分詞構文で結び付けた形のことです。例えば、次の 2 つの文をもとに、絶対分詞構文にしてみましょう。

(1) Le Japon est une région très volcanique.
     (日本はとても火山の多い地域である)

「région (地域)」は女性名詞。「très (とても)」は副詞。「volcanique (火山性の、火山の多い)」。第2文型です。

(2) On y trouve beaucoup de sources thermales.
     (そこには多くの温泉がある)

「trouve」は他動詞 trouver (見つける、見出す)の現在(3人称単数)。その前の「y」は中性代名詞で「そこに」。「On y trouve」で逐語訳すると「人はそこには~を見出す」ですが、on は受身的に訳すと自然になるため、「そこには~が見出される」、つまり「そこには~がある」となります。「beaucoup de ~」は「多くの~」。「source (泉)」は女性名詞なので、次の形容詞「thermal (温泉の)」に女性の e がついています。「source thermale」で「温泉」。

さて、この 2 つの文を絶対分詞構文にする場合、(1)の文が(2)の文の原因・理由となっているので、(1)の文の動詞を分詞にします。(1)の文は受動態や過去ではないので、現在分詞を使います。

  Le Japon étant une région très volcanique, on y trouve beaucoup de sources thermales.
   (日本はとても火山の多い地域であるので、そこには多くの温泉がある)

上の(1)と(2)の文は、もちろん接続詞を使って結び付け、次のように言うこともできます。

  Parce que le Japon est une région très volcanique, on y trouve beaucoup de sources thermales.

この他、原因・理由を表す他の接続詞 puisque, comme などを使うこともできます。
普通の会話では、このように接続詞を使って言うほうが普通です。
絶対分詞構文は文章で使われます。

  ⇒ 他の例文(諺)

絶対分詞構文の変形:「A を B したまま」

この表現は、小説などでよく出てきます。
体の一部を表す名詞と一緒に使います。
「A を B したまま」という部分は、主に文末(主節の後ろ)にきます。

 1. 「体の一部を表す名詞」(A) + 「過去分詞」(B)

  Il me parlait, les yeux baissés. (目を伏せたまま、彼は私に話していた)

「parlait」は parler (話す)の直説法半過去。「yeux」の単数形は「œil」(「œ」は o と e のくっついた文字です)。「œil」は「目」という意味の男性名詞で、ことさら「片目」と言う場合は、「1 つの」という意味で不定冠詞をつけて「un œil」と言いますが、通常は複数形「les yeux」で使います。体の一部を表す名詞には原則として定冠詞がつきます。「baissés」は他動詞 baisser (下げる、伏せる)の過去分詞 baissé に s がついた形で、この s は男性複数の「yeux」に合わせています。
さて、この文は、逐語訳すると、「彼は私に話していた、伏せられた目」ですが、これでは「伏せられた目」が浮いてしまい、どこに係るかわかりません。実は、「les yeux (目)」が(A)、「baissés (伏せられた)」が(B)に相当し、「目が伏せられたまま」、つまり「目を伏せたまま」という意味になります。
この文は、être の現在分詞 étant が省略された形だと解釈することができます。

  Il me parlait, les yeux étant baissés.

こうなると、「目が伏せられた状態で」という絶対分詞構文になります。
分詞構文の「付帯状況」の意味です。
つまり、もともと次の 2 つの文がベースにあると考えられます。

  Il me parlait. (彼は私に話していた)
  Les yeux étaient baissés. (目は伏せられていた)

「étaient」は être の直説法半過去(3人称複数)です。

 2. 「名詞」(A) + 「前置詞 + 体の一部を表す名詞」(B)

  Il me parlait, la sueur au front. (汗を額に浮かべたまま、彼は私に話していた)

「sueur」は「汗」。「au」は à + le の縮約形。「front」は体の一部を表す名詞で「額(ひたい)」(比喩的に「正面」という意味にもなります)。
この文は、もともと次の 2 つの文がベースにあると考えられます。

  Il me parlait. (彼は私に話していた)
  La sueur était au front. (汗は額にあった〔汗が額に浮かべられていた〕)

「était」は être の直説法半過去(3人称単数)です。
この 2 つの文を絶対分詞構文によって結び付けると、次のようになります。

  Il me parlait, la sueur étant au front.

太字の部分は「汗が額にある状態で」という意味になります。
この étant が省略されたのが、最初の文だといえます。

一般に étant というのは省略されやすい言葉で、過去分詞を使った分詞構文の前には étant が抜けていると見ることができます。例えば、さきほど挙げた例文では、

  文頭  Étant détruite par la guerre, la ville n'existe plus.
  文中  La ville, étant détruite par la guerre, n'existe plus.
  文末  La ville n'existe plus, étant détruite par la guerre.

というように、いずれも étant が省略されていると考えることができます。
étant は、もともと être + p.p. の助動詞 être の部分であり、これを省いて過去分詞だけにしても分詞構文になりうるからです。



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