名詞・冠詞
名詞・冠詞
名詞
1. 男性名詞と女性名詞の見分け方
-e で終わっていたら女性名詞
-e 以外で終わっていたら男性名詞
です。ただし、例外も多く、
-e で終わっていても男性名詞
-e 以外で終わっていても女性名詞
というケースが、基本的な単語でも 100 個ぐらいはありますので、個別に覚えるしかありません。
その他、
-age で終わっていたら男性名詞
-ment で終わっていたら男性名詞
-tion で終わっていたら女性名詞
-té で終わっていたら女性名詞
で、これはあまり例外はありません。例えば、
le mariage ル マリアージュ (結婚)
le mouvement ル ムーヴマン (動き)
la création ラ クレアスィオン (創造)
la propreté ラ プロップルテ (清潔さ)
2. 覚え方
名詞を覚える時は、男性名詞か女性名詞か区別できるよう、冠詞をつけて覚えるようにします。定冠詞でも不定冠詞でも構いません。例えば、定冠詞をつけて
le jour ル ジュール (昼)
la nuit ラ ニュイ (夜)
と覚えます。
母音で始まる名詞の場合は、定冠詞は男女同じになります。例えば、
l’homme ロム (人間、男)
だと、形の上では男性名詞か女性名詞かわかりませんので、不定冠詞をつけ、
un homme アン ノム (人間、男)
と覚えてください。
単語によって、定冠詞をつけたり、不定冠詞をつけたりして構いません。例えば、
un livre アン リーヴル (本)
le livre ル リーヴル (本)
の、どちらで覚えても構いません。要は、男性か女性かわかればよいのです。
- ただし、あまり「男性名詞か女性名詞か」と神経質になる必要はありません。
なぜかというと、文章を読む場合は、ほとんどの名詞には冠詞がついているため、辞書を引くまでもなく、冠詞を見れば男性名詞か女性名詞かがわかります。あるいは、その名詞を受ける人称代名詞を男性形にしているか女性形にしているかで区別がつきます。また、一致している形容詞の形や、慣れてくれば過去分詞の性数の一致によってもわかるようになります。
会話なら、相手の話を聞く時に、どの冠詞をつけているか注意して聞いていれば、男性名詞か女性名詞かわかります。あるいは、慣れてくると、例えば「カフェ オレ」という単語がフランス語で「café au lait」と綴り(「café」は「コーヒー」、「lait」は「牛乳」の意味)、「au」は à と le の縮約形だということを知っていれば、「lait (牛乳)」という名詞は前に le がつくのだから男性名詞だ、ということが一瞬のうちに頭の中で確認できるようになります。
定冠詞
1. 定冠詞の形
定冠詞は、英語の the に相当します。
母音の前では、男性単数も女性単数も l’ という同じ形になります。
「le」の末尾の e は発音しません。「les」の末尾の s も発音しません。
複数形は、男性・女性とも同じ形になります。
例:
le livre (発音:「ル リーヴル」) 本 (男性名詞)
la maison (発音:「ラ メゾン」) 家 (女性名詞)
les livres (発音:「レ リーヴル」) 本 (男性名詞)
les maisons (発音:「レ メゾン」) 家 (女性名詞)
上の表のカッコの中の形は、後ろに母音(=「アイウエオ」)で始まる単語が来たときの形です。後ろに母音で始まる単語が来ると、男性形も女性形も l’ となります。
l’oiseau (発音:「ロワゾー」) 鳥 (男性名詞)
l’ombre (発音:「ロンブル」) 影 (女性名詞)
男性名詞「oiseau (鳥)」も、女性名詞「ombre (影)」も、どちらも母音で始まるので、ともに定冠詞は l’ となります。
「無音の h 」で始まる語の前でも l’ となります。
前置詞 à (=英語の to や in などに相当)または de (=英語の of と from に相当)の後ろに定冠詞(男性単数の le または複数の les)がくると、両者がくっついて、特殊な「縮約形」(=くっついた形)になります。
女性単数の la は「縮約」しません(=くっついた形はありません)。
縮約形は、次の表のように 4 つあります。
定冠詞 | |||
+ le | + les | ||
前置詞 | à + | au | aux |
de + | du | des |
この表の見方は、
à + le ⇒ au になる
de + le ⇒ du になる
à + les ⇒ aux になる
de + les ⇒ des になる
という意味です。
ちなみに、このことからも、à と de というのは他の前置詞とは別格扱いすることができる、特に重要な前置詞だということがわかります。
縮約形の des は、たまたま次の不定冠詞の複数の des と同じ形になるので、最初のうちはどちらの des なのか考える癖をつけてください。
特定されるものには定冠詞をつけます。
例えば、すでに知られているもの、すでに話題にのぼっているもの、目の前にあるもの、世界に一つしかないもの(国名も含む)などです。
逆に言うと、定冠詞には特定化・限定化(個別化)する働きがあります。
定冠詞には、上のように「特定化」(個別化)する働きとは逆に、「概念化」(抽象化)する働きもあります。
L'homme est mortel. (人間というものは死すべきものだ〔=人間、いつかは死ぬ〕)
最初の「L'」が定冠詞です。「homme」は「人間」「男」という意味の男性名詞。「est」は英語の be 動詞に相当する être の現在(3人称単数)。「mortel」は「死すべき」という意味の形容詞。
不定冠詞
1. 不定冠詞の形
不定冠詞は英語の a, an に相当します。
不定冠詞の変化
男性 | 女性 | |
単数 | un | une |
複数 | des |
英語では複数形は存在しませんから、最初は不定冠詞の複数 des というのは違和感を覚えるかもしれません。
つまり、フランス語は英語に比べ、何にでも冠詞をつけたがる言葉だといえます。無冠詞にするには、それなりの理由がなければなりません。
2. 不定冠詞の用法
(1)単数形
- 単数形の un, une は数詞と同じため、「1 つの」と訳したほうがよい場合もあります。
明らかに冠詞として使っている場合は、特に訳す必要はありません。
- 複数形の des は、単に「いくつかの」と複数を意味することがほとんどですが、「いくつもの」つまり「多くの」という意味になる場合もあります。
depuis des années (何年も前から)
「depuis」は前置詞で「~から」。「année」は女性名詞で「年」。これは「何年か」ではなく、「何年も」という、回数が多いことを強調しながら使うことの多い表現です。
部分冠詞
1. 部分冠詞の形
部分冠詞は、数えられない名詞(不可算名詞)の前につきます。
数えられないため、部分冠詞には複数形は存在しません(そもそも単数と複数の区別がありません)。
男性名詞の前か、女性名詞の前か、母音で始まる名詞(男性名詞・女性名詞)の前かで、次の 3 つの形になります。
これらは定冠詞の前に de がついた形と同じです。
男性 | 女性 | 母音の前 |
du | de la | de l' |
2. 部分冠詞の用法
食べる対象・飲む対象となる場合は、「一部を食べる・一部を飲む」と捉えられるため、原則として名詞には部分冠詞をつけます。例えば、
manger du poisson (魚を食べる)
骨や内臓は食べず、魚の肉の「一部」を食べるという感覚です。
ただし、「魚」という名詞には部分冠詞がつくと決まっているわけではありません。
例えば、「水槽の中には 5 匹の魚がいる」という場合は数えられるため、「cinq poissons (5 匹の魚)」となります。
また、「私は肉より魚のほうが好きだ」という場合は「肉というもの」「魚というもの」というように「概念化」されるため、定冠詞がついて「le poisson」となります。
このように、同じ名詞でも、捉え方によって部分冠詞がついたり、他の冠詞がついたりします。
「感情」を表す名詞にも、よく部分冠詞がつきます。
Elle a éprouvé de la joie. (彼女は喜びを抱いた)
「a」は助動詞 avoir の現在(3人称単数)。「éprouvé」は他動詞「éprouver ( [感情を] 抱く)」の過去分詞(p.p.)。「avoir + p.p.」で複合過去になっています。「joie」は女性名詞で「喜び」。なお、「éprouvé」の後ろに「de」がありますが、「éprouver」は「de」と一緒に使う動詞(=「de」を伴う間接他動詞)ではありません。この文は、「Elle (彼女は)」が主語(S)、「a éprouvé (抱いた)」が動詞(V)、「de la joie (喜びを)」が直接目的(OD)の第3文型で、「de」は部分冠詞の一部です。
この「joie (喜び)」という名詞も、捉え方によっては他の冠詞がつきます。例えば、
une grande joie (大きな喜び)
これは、「どのような喜びか」という、「喜びの種類」を表しています。「一つの種類」として捉えられるため、不定冠詞がつきます。
このように、一般に形容詞がつくと不定冠詞がつきやすいという傾向があります。
英語の諺 Time is money. のフランス語訳です。
「temps」は男性名詞で「時」「時間」、「c'est」は「それは~だ」。細かく言うと、「Le temps」の部分は文頭に飛び出て(=遊離して)おり、それを代名詞「c'」で受け直しています。「argent (お金)」は男性名詞で、部分冠詞がついています。
「c'」が主語(S)、「est」が動詞(V)、「de l'argent」が属詞(C)の第2文型です。
英語だと Time も money も無冠詞ですが、フランス語にすると冠詞が必要です。
「時間」は「時間というもの」と概念化されているため定冠詞がついており、「お金」は数えられないもの(不可算名詞)として捉えられています。
冠詞の de
肯定文の簡単な例を挙げると、
J’ai une voiture. (私は一台の車を持っている)
「J’」は後ろに母音がきたときの形で、「Je」と同じ。これがこの文の主語(S)です。
「ai」は「持っている」という意味の avoir の現在(1人称単数)。これが動詞(V)です。
「voiture (車)」は女性名詞で単数形なので、その前の不定冠詞「une」は女性単数の形になっています。この「une voiture」が直接目的(OD)です。
つまり、この文は S + V + OD の第 3 文型になっています。
さて、この文を ne と pas で挟んで否定文にすると、次のようになります。
Je n’ai pas de voiture. (私は車を持っていない)
肯定文で直接目的(OD)についていた冠詞 une が、 de に変わっています。
このように、否定文では直接目的には冠詞 de をつけるのが原則です。
冠詞 de の代わりに不定冠詞や定冠詞をつけることも可能ですが、この場合は特定のニュアンスがつきます。
定冠詞を使った場合:
Je n’ai pas la voiture. (私はその車を持っていない)
不定冠詞を使った場合:
Je n’ai pas une voiture. (私は一台も車を持っていない)
このように否定の後ろに不定冠詞がくると、「1 つも... ない」という強調になり、発音もわざと pas un で「バザン」、 pas une で「パズュヌ」となります。
なお、「非人称の il 」を使った否定文では、原則として「意味上の主語」にこの冠詞の de がつきます(そう頻繁には出てきません)。
2. 「複数の形容詞+複数の名詞」の前では、不定冠詞 des は de になる
一般に、フランス語では形容詞は名詞の後ろに置くため、「名詞+形容詞」という順序になることが多いわけですが、一部の形容詞は名詞の前に置きます。この場合は、不定冠詞の複数 des は自動的に de になる、という規則があります。
des hautes montagnes → de hautes montagnes (高い山々)
des grosses larmes → de grosses larmes (大粒の涙)
無冠詞
原則として、フランス語の名詞にはすべて冠詞がつきます。
英語とは違って、不定冠詞の複数にまで冠詞(des)をつけます。ですから、英語よりも、冠詞がたくさんつきます。
無冠詞にするには、それなりの理由が必要です。
以下に、どのような場合に無冠詞になるか、整理してみましょう。
具体的には、以下のような言葉です。
- 所有形容詞
votre nationalité (あなたの国籍)
- 指示形容詞
ce garçon (この少年)
- 疑問形容詞
quelle voiture (どの車)
- 一部の不定形容詞
aucun homme (いかなる人も)
最後の「形容詞句」とは、2 語以上で 1 語の形容詞と同じような意味になる言い廻しのことです。英語の a lot of ~ (多くの~)などと同じです。
都市名は無冠詞です。
Paris (パリ)
ちなみに固有名詞でも、国名・地方名には定冠詞がつきます。
le Kanto (関東地方)
日本の地方名はすべて男性名詞で le がつきます。
hommes, femmes, vieillards, enfants (男も女も、老人も子供も)
jour et nuit (昼も夜も)
de fleur en fleur (花から花へ)
pas à pas (一歩一歩。「リエゾン」により「パザパ」と発音)
Paris, capitale de la France (フランスの首都、パリ)
同格の場合、典型的にはこのようにコンマを打ち、コンマの後ろの名詞が無冠詞になります。
ここでは、「capitale (首都)」という女性名詞が無冠詞になっています。
5. 属詞
「属詞」になる名詞は、基本的に無冠詞です。「属詞」とは、être (=英語の be 動詞)などの後ろに置かれる言葉のことです。詳しくは「6文型」のページで説明します。
Il est étudiant. (彼は学生です)
英語だと、「He is a student.」というように、冠詞がつきます。
フランス語の場合、「属詞」の部分には基本的に形容詞がきます。「étudiant」も、いわば形容詞的に使われているので、無冠詞だといえます。
ここに冠詞をつけると、特殊なニュアンスが出てくる場合があります。例えば、
Il est un étudiant.
と言うと、「彼は一人の学生です」というよりも、文脈によっては「彼は単なる一人の学生にすぎません」というような感じが出てきます。
ただし、 C'est ~. という表現の場合は、不定冠詞をつけるのが普通です。
C'est un étudiant. (それは学生です)
l'eau de mer (海水)
「eau」は女性名詞「水」で、定冠詞 l' がついています。「de」は前置詞(英語の of )。「mer」も女性名詞で「海」ですが、「海の水」が「海水」となって一語化されているため、de の後ろで無冠詞になっています。
le chemin de fer (鉄道)
「chemin」は男性名詞「道」で、定冠詞 le がついています。
「fer」も男性名詞で「鉄」ですが、「鉄の道」が「鉄道」となって一語化されているため、やはり de の後ろで無冠詞になっています。
7. 「de + 名詞」が一語の形容詞のように意識される場合
これは上の 6. とも重なりますが、「de + 名詞」が一語の形容詞のように意識される場合は、 de の後ろの名詞が無冠詞になります。
例えば上の 6. の例だと、「de mer」は marin (海の)、「de fer」は ferroviaire (鉄道の)という形容詞のように意識されているから無冠詞なのだともいえます。あるいは、
voix de cristal (澄み切った声)
「voix」は女性名詞で「声」、「cristal」は男性名詞で「クリスタル、水晶」で、逐語訳すると「水晶の声」ですが、この「de cristal」は cristallin (水晶のように澄んだ)という形容詞のように意識されています。
つまり、実体(実物)として実際に目の前に「水晶」があるわけではなく、声の一種類として、「水晶のような」声だと形容しているだけなので、無冠詞になっているといえます。
8. 前置詞 de の後ろの不定冠詞 des および部分冠詞
la production de céréales (穀物の生産)
「production (生産)」は女性名詞で、前に定冠詞 la がついています。
「céréales」は、女性名詞「céréale (穀物)」に複数の s がついています(穀物といっても、大豆や小麦など、色々種類があるため、複数です)。これを、
× la production de des céréales
と言うことは絶対にありません。
あまり他の参考書には書かれていませんが、これは重要な規則です。
特定の前置詞 en (~内で)、sans (~なしで)などの後ろでは、原則として無冠詞になります。
en prison (刑務所内の、服役中の)
これを、場所を表す前置詞「dans (~の中で)」を使うと、
dans la prison (刑務所の中で)
と冠詞(この場合は定冠詞)がつきます。
どちらかというと、dans は具体的、en は抽象的なニュアンスがあります。
熟語表現では、かなりの割合で無冠詞になります。
avoir lieu (起こる)
avoir besoin de ~ (~を必要としている、~が必要だ)
「lieu (場)」は男性名詞で、もともと「avoir lieu」は「場を持つ」という意味。
「besoin (必要性、欲求)」は男性名詞で、もともと「avoir besoin de ~」は「~という必要性を持つ」という意味。
どちらも、熟語化され、無冠詞になっています。
古くから存在する諺では、通常なら冠詞がつく場合でも、無冠詞になることがよくあります。これは古い語法の名残りで、昔は冠詞は必要がない場合も多かったからです。
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