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フランス語人称代名詞

人称代名詞

人称代名詞の変化

  • 次の表は、フランス語と英語の人称代名詞を比較したものです。
    英語の「my」「your」等に相当する言葉は、フランス語では「所有形容詞」として別扱いされます。
  • 母音の前では(=次の言葉が母音で始まる場合は)、表のカッコ内の形になります。
  • 3 人称(単数・複数)では直接目的・間接目的を区別します(英語では区別しません)。
  • 3 人称は「人」だけでなく「物」も指します
    「男性名詞」と「女性名詞」の区別に応じて、「物」でも男性・女性を区別します。
    3 人称が「物」も指すということは、英語の「it」は、フランス語では人称代名詞の 3 人称で表現することを意味します。
  • 3 人称には直接目的・間接目的や男性・女性の区別が存在するため、英語の「it」よりも、フランス語のほうが前に出てきたどの言葉を指すのかが絞られることになります。

フランス語英語
人称主語
「~が」
直接目的
「~を」
間接目的
「~に」
強勢形主語目的語
単数1人称je (j')me (m')moiIme
2人称tute (t')toiyouyou
3人称ille (l')luiluihe, ithim, it
ellela (l')elleshe, ither, it
複数1人称nousweus
2人称vousyouyou
3人称ilslesleureuxtheythem
elleselles


  • 上の表の単数 3 人称の直接目的の男性 le (l')、女性 la (l') 、複数 3 人称の直接目的 les は、定冠詞の le (l'), la (l'), lesまったく同じ形になります。しかし両者は、語順によって明確に区別されます。なぜなら、定冠詞は名詞の直前にくるのに対し、人称代名詞の直接目的は動詞の前にくるからです(次の「代名詞の語順」を参照)。
  • 代名詞は、普通は前に出てきた名詞を指しますが、後ろの名詞をあらかじめ代名詞に置き換えることもあります。それは、従属節(またはそれに類する文の要素)が前にきた場合です。この場合は、従属節の中の代名詞が、後ろにくる主節の中の名詞を指すことができます。
      ⇒ 例文(格言)  ⇒ 例文(聖書)
  • 非人称の il (天候を表す表現、形式主語・仮主語、Il faut ~, Il y a ~, Il s'agit de ~ など)に関しては、「非人称の il」のページを参照してください。

tu と vous、ils について

 1. tu と vous について

  • 2 人称を指す代名詞は 2 種類あり、親しい相手に対しては tu を使用し(親称)、親しくない相手に対しては vous を使用します(敬称)。
  • 知り合ったばかりのうちは vous を使い、だんだん親しくなってくると tu に切り替えます。
    ある程度親しくなったのに vous を使い続けると、距離を置いているような(よそよそしい)感じを与え、かえって不自然です。
    最初のうちは、どのタイミングで vous から tu に切り替えるかは難しいので、相手のフランス人に任せ、相手が tu を使い出したら、その瞬間を逃さず、こちらも tu で相手を呼ぶようにしましょう。
  • 便宜上、 tu は「君」、 vous は「あなた」と訳しますが、必ずしも日本語の「君」「あなた」と同じではありません。
    日本語では、親しいか親しくないかによる使い分けがなく(そもそも「人称」と言う概念自体が存在せず)、日本語のほうが「君」「おまえ」「あなた」「あんた」「おたく」など多様な表現が存在するので、その場に合わせて適当に訳して構いません。
  • 若い人ほど、いきなり最初から tu で話しかけます。
    インターネット(掲示板など)では、面識がなくても、むしろ最初から tu で呼ぶのが普通です。
  • 複数形(目の前に複数の人がいる場合)は、親しくても親しくなくても vous を使います。
    つまり、 vous には 3 種類あります。
単数複数
 親称(親しい) tu (君) vous (君たち)
 敬称(親しくない) vous (あなた) vous (あなたたち)


 2. ils について

  • ils は便宜上、「彼ら」と訳しますが、 ils は必ずしも「男たち」だけとは限りません。
    女だけの場合は女性複数の elles (彼女たち)を使いますが、男と女が混じっている場合は ils を使います。
    たとえば、男女の恋人の場合も、まとめて呼ぶ時は ils を使うので、こういう場合は「彼らは」とは訳さず、「二人は」と訳すと日本語らしくなります。

代名詞の語順

人称代名詞(および再帰代名詞)の直接目的・間接目的と中性代名詞は、動詞の前に置きます。
代名詞が2つ以上重なった場合の語順は、次の表のようになります。

主語否定代名詞(主語以外)動詞否定
人称代名詞・再帰代名詞
の直接目的・間接目的
中性代名詞
SnemeyenVpas
telelui
nousla
vouslesleur
se


 1. 人称代名詞・再帰代名詞の直接目的・間接目的は、原則として動詞の前に入れます。

  Je lis ce livre. (私はその本を読む)

「lis」は他動詞 lire (読む)の現在(1人称単数)。「ce」は「その」。「livre」は男性名詞で「本」。
この「ce livre」を代名詞に置き換えると、次のようになります。

  → Je le lis. (私はそれを読む)

 2. 複合時制(複合過去など)の場合は、助動詞の直前に入れます。

  J’ai acheté ce livre. (私はその本を買った)

「ai」は助動詞 avoir の現在(1人称単数)。「acheté」は他動詞「acheter (買う)」の過去分詞(p.p.)。「avoir + p.p.」で複合過去
この「ce livre」を代名詞に置き換えると、次のようになります。

  → Je l’ai acheté. (私はそれを買った)

 3. 準助動詞の場合は、本動詞の直前に入れます。

  Je veux lire ce livre. (私はその本を読みたい)

「veux」は準助動詞 vouloir (~したい)の現在(1人称単数)。
この「ce livre」を代名詞に置き換えると、次のようになります。

  → Je veux le lire. (私はそれを読みたい)

 4. 否定の ne と pas の位置

ne と pas で動詞を挟むと否定文になります。
代名詞がついている場合は、代名詞と動詞をひっくるめて ne と pas で挟みます

  (1) 上記 1. の例文の否定文

  Je ne lis pas ce livre. (私はその本を読まない)

  → Je ne le lis pas. (私はそれを読まない)

  (2) 上記 2. の例文(助動詞を使う場合)の否定文

助動詞を使う場合は、助動詞(とその直前の代名詞)を ne と pas で挟みます
過去分詞は pas の後ろに置きます。

  Je n’ai pas acheté ce livre. (私はその本を買わなかった)

  → Je ne l’ai pas acheté. (私はそれを買わなかった)

  (3) 上記 3. の例文(準助動詞を使う場合)の否定文

準助動詞を使う場合は、準助動詞を ne と pas で挟みます
不定詞は pas の後ろに置きます。

  Je ne veux pas lire ce livre. (私はその本を読みたくない)

  → Je ne veux pas le lire. (私はそれを読みたくない)

間接目的の用法

  • 「前置詞 à + 人」は、代名詞に置き換わると間接目的一語になり、 à は消えます
    例えば、

  Jean ressemble à sa mère. (ジャンは彼の母に似ている)

「Jean」は男の名前。「ressemble」は ressembler (似ている)の現在(3人称単数)。この動詞は、「ressemble à ~」で「~に似ている」という使い方をする間接他動詞です。
「sa」は「Jean」を指しますが、所有形容詞は後ろの名詞に合わせて形が変わるため、後ろの「mère (母)」に合わせて女性単数の形になっています。
この「sa mère (彼の母)」を代名詞に置き換えると、動詞の前に移動し、 à は消えて、次のようになります。

  Jean lui ressemble. (ジャンは彼女に似ている)

つまり、「à sa mère (彼の母に)」という部分が「lui (彼女に)」になるわけです。

  • ただし、一部の動詞は「 à + 強勢形」になります。例えば、

  Je pense à Jean. (私はジャンのことを考える)

「pense」は penser (考える)の現在(1人称単数)。この動詞も「penser à ~」で「~のことを考える」という意味の間接他動詞になります。
この penser などの一部の動詞の場合は、

 × Je lui pense.

とはならず、

  Je pense à lui. (私は彼のことを考える)

となります。ただし、「 à + 強勢形」になる動詞は、それほど種類は多くはありません。

強勢形の用法

もともと、代名詞というのは「名詞に代わる」ものであるため、いわば名詞よりも「軽い」ないし「弱い」イメージがありますが、名詞と同程度にまで存在感が強まった形が強勢形だといえるでしょう。
主に、以下のような場合に使用します。

 1. 対比・強調

  Moi, je suis contre. (私は、反対です)

「contre」は、ここでは「反対の」という意味です。

  Moi aussi. (英語の "Me too" )

 2. 前置詞の後ろ

前置詞の後ろでは、必ず強勢形になります。

  Je ne peux pas vivre sans toi. (私はあなたなしでは生きていけない)

「peux」は pouvoir (~できる)の現在(1人称単数)。
「sans」は「~なしで」という意味の前置詞(英語の without)。

 3. 比較の que の後ろ

比較の que の後ろでは、必ず強勢形になります。

  Il marche plus vite que moi. (彼は私よりも速く歩く)

「plus ... que ~」で「~よりも ... だ」(英語の more ... than ~)。「marche」は自動詞「marcher (歩く)」の現在形(3人称単数)。「vite」は副詞で「速く」。

 4. 命令形

肯定命令文で、命令形に単数 1 人称・ 2 人称の人称代名詞をつける場合は、意味的に直接目的でも間接目的でも、強勢形にしてハイフンの後ろに置きます

  Excusez-moi. (英語 "Excuse me")

直訳すると「私を許してください」。この文では、「moi」は意味的に他動詞「excuser (許す)」の直接目的ですが、強勢形になっています。
ちなみに 3 人称の場合は、強勢形にはならず、間接目的または直接目的を使います。

  Donne-lui ce livre. (彼 [彼女] にこの本を与えなさい)

「Donne」は「donner (与える)」の命令形。この文では、直接目的は「ce livre」で、「lui」は間接目的です。動詞が命令形なのでハイフンの後ろに付いています。

 5. 主語になる強勢形

3 人称の強勢形(lui, elle, eux, elles)は文頭でそのまま主語になることが可能です。
  ⇒ 例文(聖書)

ただし、1 人称 moi と 2 人称 toi は、そのままでは主語になれず、別途 je や tu を主語に立てて、「Moi, je...」「Toi, tu...」と言う必要があります。

不定代名詞 on

「人称代名詞」とは少し異なりますが、ここでフランス語特有の不定代名詞 on について取り上げます。 on は必ず主語になり、だいたい次の 1 ~ 4 の訳し方があります。

 1. なるべく訳さない(漠然と「人は」の意味)

  Au Japon, on mange du poisson cru.

「Au」は「à」と「le」の縮約形。「Japon (日本)」は男性名詞なので「le」がつきます。「mange」は「manger」の現在形(3人称単数)。「du」は「部分冠詞」。「poisson (魚)」は男性名詞。「cru」は形容詞で「生の」。
文の要素で分けると、「Au Japon」が状況補語、「on」が主語(S)、「mange」が動詞(V)、「du poisson cru」が直接目的語(OD)で第3文型です。
逐語訳すると、「日本では、人は生の魚を食べる」ですが、「人は」は訳さないで、単に「日本では、生の魚を食べる」と言ったほうが日本語らしくなります。

もともと、日本語は主語がなくても通じる言語ですが、フランス語では(英語でも)、文にするには(命令形を除き)主語が必要なので、あまり意味がなくても形式上、主語を置いておきたい、という場合に重宝する言葉です。

なお、形の上では(文法的には)単数形ですが、意味的には複数の「人々」を指す場合もあります(文脈次第)。

 2. 受身的に訳す

  On a construit cette église au XIIIe siècle

「a」は助動詞 avoir の現在(3人称単数)。「construit」は他動詞 construire (建築する)の過去分詞(p.p.)。「avoir + p.p.」で複合過去。「église (教会)」は女性名詞なので、「この」を意味する「ce」は女性形「cette」になっています。「au」は「à」と「le」の縮約形「XIII」とその右上の「e」で「13番目の」。「siècle (世紀)」は男性名詞。
逐語訳すると、「人はこの教会を13世紀に建築した」ですが、直訳調すぎます。かといって単に「人は」を省き、「この教会を13世紀に建築した」と訳すと、「誰が?」という話になるので、「この教会は13世紀に建築された」と受身的に訳すと自然になります。
このように、 on を使うと、受動態と同じような意味を表すことができます。

 3. 「誰かが」と訳す

  On sonne. (誰かがベルを鳴らしている)

「sonne」は自動詞 sonner (鳴る、ベルを鳴らす)の現在(3人称単数)。
玄関のインターホンを鳴らしているなら、「誰か来た」という感じになります。

 4. わざと「人は...」と訳す(ことわざ・格言で)

ことわざ・格言では、「人は... するものだ」と訳すと、うまくいく場合があります。

 5. l'on という形について

文頭または si, que, et, ou の後ろでは l'on と書く場合もありますが、この l’ は語調を整えるためのもので、意味はありません。入れても入れなくても構いません(ただし、que の後ろで l' を入れない場合は qu'on となります)。

  ⇒ 例文(諺)

 6. 何回出てきても on

on はもともと漠然とした言葉なので、2 回目に出てきたときに il などに置き換えることはできません。何回出てきても on です。
逆にいうと、同一文中で出てきた on は、同じ人を指します。
2 回目に出てきた on は「自分」と訳すとうまくいきます。

  ⇒ 例文(諺)

 7. 直接目的・間接目的は nous, vous で代用

不定代名詞 on は主語にしかなりません。直接目的・間接目的の形は存在しないため、 nous や vous で代用します。








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