命令文
命令文
命令形の作り方
命令形は直説法現在の tu, nous, vous の活用と同じです。
動詞が tu, nous, vous の直説法現在の活用と同じで、なおかつ主語がなかったら、命令形だと取ることができます。
ただし、例外的に、命令形が直説法現在とは違う形になることもあります。
第 1 群規則動詞、末尾が -vrir と -frir で終わる動詞、および aller の場合は、現在形の tu の活用の末尾の s が脱落します。
直説法現在 | 命令形 | |
tu nous vous | donnes donnons donnez | donne ! donnons ! donnez ! |
直説法現在 | 命令形 | |
tu nous vous | vas allons allez | va ! allons ! allez ! |
- donne ! と donnez ! は「与えろ」または「与えなさい」、donnons ! は「与えましょう」という意味です。
- va ! と allez ! は「行け」または「行きなさい」、allons ! は「行きましょう」の意味になるはず... ですが、実際には会話では「さあ」「おい」「まさか」「おやおや」など色々な意味になります。 ⇒ 例文(ラ・マルセイエーズ)
2. 例外の例外:やはり s をつける場合
上の規則にもかかわらず、後ろに中性代名詞 en または y がつくと、発音しやすくするために s がつきます(次の母音とつなげて濁って発音します)。
なお、代名詞(人称代名詞・再帰代名詞・中性代名詞)は通常は動詞の直前に置きますが、命令形の場合は動詞の後ろにハイフンを入れて代名詞をつけます。
donner + en の例
直説法現在 | 命令形 | |
tu nous vous | donnes donnons donnez | donnes-en ! donnons-en ! donnez-en ! |
aller + y の例
直説法現在 | 命令形 | |
tu nous vous | vas allons allez | vas-y ! allons-y ! allez-y ! |
【カタカナ発音】
donner + en の命令形:「ドンヌ ザン、ドノン ザン、ドネ ザン」
aller + y の命令形:「ヴァ ズィ、アロン ズィ、アレ ズィ」
- donnes-en ! と donnez-en ! は「それを与えろ」または「それを与えなさい」、 donnons-en ! は「それを与えましょう」という意味です。この en は「中性代名詞 en その 2 :不特定の同類の名詞を指す en 」で、donner の直接目的です。
- y は「à + 場所」に代わる中性代名詞で、vas-y ! と allez-y ! は「そこに行け」、 allons-y ! は「そこに行きましょう」の意味になるはず... ですが、実際には会話では「さあ、やりな」「どうぞ」「それ、行こう」などの意味になります(allons-y ! は英語の Let's go ! に相当)。
3. 接続法から命令形を作る場合
(1) avoir と être
avoir と être の命令形は、直説法現在ではなく接続法現在の tu, nous, vous の活用と同じになります(avoir の tu の末尾の s は脱落します)。
avoir
接続法現在 | 命令形 | |
que tu que nous que vous | aies ayons ayez | aie ! ayons ! ayez ! |
être
接続法現在 | 命令形 | |
que tu que nous que vous | sois soyons soyez | sois ! soyons ! soyez ! |
【カタカナ発音】
avoir の命令形:「エ、エイヨン、エイエ」
être の命令形:「ソワ、ソワイヨン、ソワイエ」
- 例文は、次の項目の 1. と 2. を参照してください。
savoir と vouloir の命令形も、接続法現在の語幹をもとにして作ります。
savoir(知っている)は、普通は tu と vous に対する命令しか使われません(tu 末尾の s と、 nous および vous の i は脱落します)。
vouloir(~したい、望む)は、普通は vous に対する命令しか使われません。
接続法現在 | 命令形 | |
que tu que nous que vous | saches sachions sachiez | sache ! sachons ! sachez ! |
接続法現在 | 命令形 | |
que tu que nous que vous | veuilles voulions vouliez | veuillez ! |
【カタカナ発音】
savoir の命令形:「サッシュ、サッション、サシェ」
vouloir の命令形:「ヴイエ」
- 意味と例文については、次の項目の 8. と 9. を参照してください。
命令文の用例と用法
avoir の命令形を使った、よく使う例文を挙げておきます。
Ayez du courage ! (元気を出してください)
「courage」は男性名詞で「勇気、元気」。「du」は部分冠詞ですが、これは「courage」が感情を表す言葉で、不特定の分量を示すからです。
ただし、後ろに de + 不定詞がつくと、どのような「勇気、元気」なのかが特定されるため、定冠詞をつけ、
Ayez le courage de ~ ! (~する元気を出してください)
となります。
2. être の命令形
être の命令形を使った、よく使う例文を挙げておきます。
Soyez patient ! (我慢してください)
「patient」は「我慢強い、忍耐強い」という形容詞です(名詞だと「患者」という意味になりますが、これは「痛みを我慢する人」という意味からきた、形容詞の名詞化です)。
逐語訳は「我慢強くあれ」という感じです。
このほかにも、Soyez の後ろに色々な形容詞をつけて命令文にすることができます。
例えば、英語の
Boys, be ambitious! (少年よ、大志を抱け)
をフランス語に訳すと、次のようになります。
Garçons, soyez ambitieux !
「ambitieux」は「野心的な」という意味の形容詞です。
nous に対する命令は、英語の Let's ~(~しよう、~しましょう)と同じ意味になります。
Marchons ! (歩こう)
「Marchons」は自動詞 marcher(歩く)の nous の活用と同じですが、主語がないため、命令形です。「Marchons」はフランス国歌「ラ・マルセイエーズ」に出てくる最も印象的なフレーズです。
命令形を否定にすると、禁止の意味になります。
N'aie pas peur.(怖がらないで)
N'ayez pas peur.(怖がらないで)
「peur」は女性名詞で「恐怖」ですが、「avoir peur」で「怖がる」という熟語です。
Ne bouge pas ! (動くな)
「bouge」は、自動詞「bouger(動く)」の 2 人称単数 bouges の語尾の s を省いた、命令形です。これは、はっきりと「禁止」になっています。
これは強盗がよく使う言葉なので、万が一の時のために、ぜひ覚えておいてください。
否定命令文では、普通の肯定文と同様、代名詞は ne と動詞の間に置きます。
Ne me regarde pas. (見ないでよ)
「regarde」は他動詞 regarder(見つめる)の 2 人称単数 regardes の語尾の s を省いた、命令形です。
直訳すると「私のことを見るな」ですが、女性が着替えるときに使ったりします。
肯定命令文では、人称代名詞をつける場合は、動詞にハイフンをつけ、その後ろに置きます。単数 1 人称・ 2 人称の場合は、意味的に直接目的でも間接目的でも、強勢形になります(←例文もこちらを参照)。
命令文の後ろでは、
et は「そうすれば」という意味になります(英語の and と同じ)。
ou は「さもないと」という意味になります(英語の or と同じ)。
et を抜かして、単に命令文の後ろに文をつけ加えて「重文」にしても、「そうすれば」という仮定の意味を出すことができます。
7. 感嘆符の有無
文章(会話ではない「地の文」)では、命令文には感嘆符をつけないほうが普通です。
ただし、会話をそのまま引用する場合で、強い口調で言っている感じをはっきり伝えたければ、感嘆符をつけます。
このページでは、わかりやすいように基本的に感嘆符(!)を入れてあります。
savoir(知っている)の命令形は、tu と vous に対する形がよく使われます。
普通は接続詞の que とセットで、
Sache que... (...ということを承知しておいてくれ)
Sachez que... (...ということをご承知おきください)
という意味になります。
9. vouloir の命令形
vouloir(~したい、望む)の命令形は、普通は vous に対する形しか使われません。
「~したい、望む」の命令形なので、元の意味は「~したいと思ってください、~することを望んでください」という感じですが、要するに「(よろしければ)~してください」という、丁寧な依頼になります。例えば、
Veuillez cliquer ici. (ここをクリックしてください)
また、フォーマルな手紙の末尾でも頻繁に使われます。例えば、
Veuillez agréer, Monsieur, mes salutations distinguées.
「Monsieur」は相手が男の人だとわかっている場合の呼びかけで、相手が女の人なら「Madame」になります。ここを除いて逐語訳すると、「私の格別の挨拶を受け入れてください」となります。これは「敬具」という意味の、最もよく使われる表現の一つです。
再帰代名詞を使った命令文
この項目は、再帰代名詞のページを見てから、また戻って読んでも構いません。
1. 肯定命令文
命令形に人称代名詞をつける場合は、ハイフンの後ろに置きますが、再帰代名詞の場合も同様です。
tu と vous に対する命令では、再帰代名詞 se は「-toi」「-vous」に変わります。
再帰代名詞を使った命令文で、頻繁に使うものを下の表にまとめまてあります。
nous はそれほど使わないので、tu と vous に対する命令だけにしましょう。
表の赤字部分が再帰代名詞です。
【命令形のカタカナ発音】
1. デペッシュ トワ、デペシェ ヴー 2. テ トワ、テゼ ヴー
3. アスィエ トワ、アセイエ ヴー 4. ヴァ タン、アレ ヴー ザン
1. se dépêcher は「自分を急がせる」→「急ぐ」。
2. se taire は「自分を黙らせる」→「黙る」。
3. s’asseoir は「自分を座らせる」→「座る」。
4. s'en aller は分解不可能で、熟語として覚えるしかありませんが、「en」は「de + 場所」に代わる中性代名詞 en で、「ここから」立ち去る、「この場所から」出て行くという感じです。
なお、 tu に対する命令では、「 Va-t-en ! 」ではなく、「 Va-t’en ! 」となりますので注意してください。一般に、命令形では moi, toi は en の前では m’, t’ となります。
t’ の場合は、疑問文などで倒置にした時に意味のない -t- を入れる場合があるので、それとの混同が避けられるという効果もあります。
再帰代名詞の場合も、否定命令文では、普通の肯定文と同様に ne と動詞の間に再帰代名詞を置きます(他の代名詞を使った否定命令文と同様)。
例えば、 s’inquiéter は「自分を心配させる」→「心配する」という意味です。
これを否定命令文にすると、禁止の意味になり、逐語訳すると「心配するな」ですが、次のような意味でよく使われます。
Ne t’inquiète pas. (心配しないで)
Ne vous inquiétez pas. (ご心配なく)
inquiéter は répéter と同じ活用をする動詞で、第 1 群規則動詞と似ていますが、一部(現在形の tu などで)アクサンの向きが逆になります。
この「t’」と「vous」が再帰代名詞です。
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