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北鎌フランス語講座 - 文法編「中性代名詞」

中性代名詞

フランス語の文法でつまずきやすい項目のひとつが「中性代名詞」です。文法書によっては「人称代名詞」と呼ぶこともありますが、英語にはないフランス語特有の使い方をし、多くの学習者がつまずく重要な項目なので、ここでは伝統的に用いられてきた「中性代名詞」という言葉を使い、注意を喚起したいと思います(単なる呼び方の問題です)。

中性代名詞は en, y, le の 3 種類があります。
このうち、en が最も難しいので、一番詳しく説明することにします。

3 種類の en

中性代名詞の en について説明する前に、en は中性代名詞以外にもあり、全部で 3 種類の en がありますので、見分け方について説明します。

種類置く位置
1.前置詞の en(無冠詞)名詞の前
2.ジェロンディフで使う en現在分詞の前
3.中性代名詞の en動詞の直前

3 種類の en は、どこに置かれるかによって容易に見分けられます。

1. 前置詞は当然、名詞の前にきます。前置詞 en の後ろの名詞は無冠詞になりやすいので、無冠詞名詞の前にあったら、前置詞の en です。

2. ジェロンディフとは、「現在分詞を使った分詞構文で、現在分詞の前に en がついた形」のことです。
この en と現在分詞の間に他の代名詞が挟まる場合がありますから、必ずしも現在分詞の「直前」とは限りません。

3. 中性代名詞は、動詞の直前に置かれます。人称代名詞も動詞の前に置かれるため、代名詞が2つ以上重なる場合もありますが、他の代名詞よりも優先して中性代名詞の en は動詞の直前に置かれます。

さて、中性代名詞の en の使い方は大きく 2 つに分かれます。
「de + 物」に代わる en と、不特定の同類の名詞を指す en です。

中性代名詞 en その 1:「de + 物」に代わる en

中性代名詞 en の 1 つめの用法は、「de + 前に出てきた物」の代わりに使う用法です。
「物」には「場所」や「文脈全体」も含まれます。
大雑把に言って、この en は英語の of it に相当すると思えば理解しやすいかもしれません。
以下の例文では、de の後ろのものを代名詞に置き換えるとどうなるか、見ていきましょう。

1. 「de + 場所」に代わる(訳:「そこから」)

  Je viens de Paris. (私はパリから来ました)

「viens」(来る)は自動詞 venir の現在(1人称単数)。「de」は前置詞で「から」(英語の「from」)。
この「Paris」を代名詞に置き換えようとすると、置き換えたい言葉の前に「de」があるので、中性代名詞 en を使います。
このとき、de を含めて(つまり「de + 物」が)中性代名詞「en」に代わるので注意してください。
さらに en に置き換わると、動詞の直前に移動しますので、次のようになります。

  J'en viens. (私はそこから来ました)

2. 「de + 物」に代わる - 名詞に係る(訳:「その」)

  Je connais le nom de cette fleur. (私はこの花の名前を知っている)

「connais」(知っている)は他動詞 connaître の現在(1人称単数)。「nom (名前)」は男性名詞なので、前に冠詞「le」がついています。「fleur (花)」は女性名詞なので、その前で「この」を意味する「ce」が女性単数の形「cette」になっています。
さて、この「cette fleur (この花)」を代名詞に置き換えようとすると、置き換えたい言葉の前に「de」があるので、de を含めて中性代名詞 en に代わります。中性代名詞 en は動詞の直前に置かれますので、次のようになります。

  J'en connais le nom. (私はその名前を知っている)

3. 「de + 物」に代わる - de を伴う間接他動詞に係る

  La réussite dépend de vos efforts. (成功はあなたの努力次第だ)

この例文は第4文型でも取り上げました。
「vos efforts」を代名詞に置き換えようとすると、置き換えたい言葉の前に「de」があるので、de を含めて中性代名詞 en に代わります。中性代名詞 en は動詞の直前に置かれますので、次のようになります。

  La réussite en dépend. (成功はそれ次第だ)

4. 「de + 物」に代わる - de を伴う直接他動詞に係る

  Elle a détaché un fruit de l'arbre. (彼女は 1 個の果実を木からもぎ取った)

「a」は助動詞 avoir の現在(3人称単数)。「détaché」は détacher (引き離す・もぎ取る)の過去分詞(p.p.)。「avoir + p.p.」で複合過去。この détacher という動詞は、
  détacher A de B 「A を B から引き離す・もぎ取る」
という使い方をする、「直接他動詞(2)」のタイプの動詞です。この文では「A」が「un fruit (1 個の果実)」、「B」が「l'arbre (木)」に相当します。
さて、この「l'arbre」を代名詞に置き換えようとすると、置き換えたい言葉の前に「de」があるので、de を含めて中性代名詞 en に代わります。中性代名詞 en は動詞の直前に置かれますので、次のようになります。

  Elle en a détaché un fruit. (彼女は 1 個の果実をそこからもぎ取った)

5. 「de + 物」に代わる - de を伴う形容詞に係る

  Il est fier de sa voiture. (彼は彼の車を誇りに思っている)

形容詞「fier (誇りに思っている、自慢している)」は「de」と一緒に使う形容詞です。
「fier de ~」で「~を誇りに思っている、~を自慢している」。
「voiture (車)」は女性名詞なので、その前で所有形容詞「son (彼の)」が女性単数の形「sa」に変化しています。
さて、この「sa voiture (彼の車)」を代名詞に置き換えようとすると、置き換えたい言葉の前に「de」があるので、de を含めて中性代名詞 en に代わります。中性代名詞 en は動詞の直前に置かれますので、次のようになります。

  Il en est fier. (彼はそれを誇りに思っている)

6. 「de + 前の文脈全体」に代わる

  Il en résulte que... (そこから... という結果になる)

ちょっと難しいので、この項目は飛ばしても構いません。
「résulte」は自動詞「résulter (結果として出てくる)」の現在形(3人称単数)。「résulter de~」で「~から結果として出てくる」。
文の要素で見ると、「Il」が主語(S)(ただし、仮主語=形式上の主語)、「résulte」が動詞(V)、「que...」も主語(S)(意味上の主語)で、この「que...」が「節」(=小さな S + V を含むグループのこと)になります。
この中性代名詞「en」は、前の文脈全体を受けています。
そこからそのことによって」「それについては」と訳すとうまくいく場合が多いでしょう。

なお、以上の「その 1 」の en は、基本的に「人」は指さず、「物」や「事柄」を指します。
それに対して、次の「その 2 」で取り上げる en は、「人」も「物」も指します。

中性代名詞 en その 2:不特定の同類の名詞を指す en

中性代名詞 en の 2 つめの用法は、英語の代名詞「one」の使い方と似ています。

英語フランス語
特定のものを指すit人称代名詞 le, la, les
不特定のものを指すone中性代名詞 en

このタイプの中性代名詞 en は、英語と比較すると理解しやすいと思います。

 A) まず、英語の it について考えてみましょう。

  He wants to sell his car, and I want to buy it.
    (彼は彼の車を売りたがっている、そして私はそれを買いたい)

この最後の「it」は「his car」を指します。つまり次の文と同じです。

  He wants to sell his car, and I want to buy his car.
    (彼は彼の車を売りたがっている、そして私は彼の車を買いたい)

この文をフランス語にすると、次のようになります。

  Il veut vendre sa voiture, et je veux acheter sa voiture.

この文では、「sa voiture」が 2 回出てきますので、2 つめの「sa voiture」を代名詞に置き換えてみましょう。
「voiture」は女性単数なので、人称代名詞la」に置き換え、動詞の前に移動し、次のようになります。

  Il veut vendre sa voiture, et je veux l'acheter.

「acheter (買う)」は母音で始まるので「la」が「l'」になっています。
つまり、私は彼の車(特定の車)を(中古車として)買いたいわけです。

 B) 今度は、英語の one を使ってみます。

  He wants to sell his car, and I want to buy one.

この最後の「one」は「his car」ではなく、単に「car」を指します。つまり次の文と同じです。

  He wants to sell his car, and I want to buy a car.
    (彼は彼の車を売りたがっている、そして私は車を1台買いたい)

この文をフランス語にすると、次のようになります。

  Il veut vendre sa voiture, et je veux acheter une voiture.

この文では、「voiture」が 2 回出てきますので、2 つめの「voiture」を代名詞に置き換えると、どうなるでしょうか。
さきほどと違って、私は特定の「彼の車」を買いたいのではなく、(新車か中古車かわかりませんが)とにかく車を買いたいわけです。このように不特定のものを代名詞に置き換える場合に、中性代名詞の en を使います。
中性代名詞 en に置き換わると、動詞の前に移動します。準助動詞を使っている場合は、中性代名詞 en は本動詞の直前に置きます。すると、次のようになります。

  Il veut vendre sa voiture, et je veux en acheter une.
    (彼は彼の車を売りたがっている、そして私はそれを1台買いたい)

このように、冠詞 une は後ろに取り残されたままになるのがミソです。

この後ろの部分に何が残るかで、以下のように分類可能です。

1. 後ろに un, une または数詞が残る場合

  Y a-t-il un restaurant japonais près d'ici ?  - Oui, il y en a un.
   (「この近くに日本料理の店はありますか?」「はい、1 つあります」)

Y a-t-il」は「il y a ~(~がある)」(英語の there is)の疑問の形。「restaurant (レストラン)」は男性名詞。この質問の段階では、どの店とは特定されておらず、何でもいいから何か日本料理の店はありますか? という感じなので、不定冠詞 un がついています。「près de ~ (~の近くに)」は前置詞句(= 2 語で 1 語の前置詞扱いになる表現)。母音で始まる「ici (ここ)」の前なので「d'」となっています。
さて、答えの部分は、代名詞を使わないと、次のようになります。

  Oui, il y a un restaurant japonais.
    (「はい、日本料理の店が 1 つあります」)

この「restaurant japonais」を代名詞に置き換えたい場合は、前に不定冠詞 un があり、特定されていませんので、中性代名詞 en を使い、動詞の直前に移動させると、さきほどの文になります。このとき、最後に un が置き去りになるのがミソです。

フランス語の不定冠詞 un は数詞(「 1 つ」)も兼ねており、この不定冠詞 un は「数詞」として意識されています。
その証拠に、ここには「 2 つ」「 3 つ」と、数詞を置くこともできます。例えば、

  Oui, il y en a deux. (「はい、2 つあります」)

この文は、中性代名詞 en を使わないと次のようになります。

  Oui, il y a deux restaurants japonais.
    (「はい、日本料理の店が 2 つあります」)

この「restaurants japonais」が en に変わって動詞の直前に出て、「deux」が後ろに残ったわけです。

2. 後ろに un(e) autre や aucun(e) などの(冠詞+)形容詞が残る場合

「un autre」(女性形は une autre)は「un(e)」が冠詞、「autre (他の)」が形容詞で、合わせて英語の another に相当します。「aucun」(女性形は aucune)は「いかなる(一つの)~も」という意味の形容詞で、否定文で(否定の ne とセットで)使用し、英語の any に相当します。これらの言葉が、後ろに残るタイプです。
例えば、

  Un malheur en appelle un autre.

「malheur (不幸)」は男性名詞。「appelle (呼ぶ)」は他動詞 appeler の現在(3人称単数)。人称によって l がダブる不規則動詞です。
この文は、中性代名詞 en を使わないと次のようになります。

  Un malheur appelle un autre malheur.

逐語訳では「ある不幸は、もう一つの他の不幸を呼ぶ」ですが、「不幸は不幸を呼ぶ」という諺です。
この 2 つめの「malheur」は、何か特定の不幸を指すわけではなく、不特定のものです(どのような不幸かはわかりません)。このような場合は、中性代名詞 en を使います。en に置き換わると、動詞の直前に出て、「un autre」は後ろに残るわけです。

3. 不定冠詞の複数 des と部分冠詞と冠詞の de は消える

  Avez-vous des amis ?  - Oui, j'en ai.
    (「あなたは友達がいますか?」「はい、います」)

「Avez」は avoir の現在(2人称複数)。ここでは助動詞ではなく、「持っている」という本動詞として使っています。疑問文なので倒置になり、人称代名詞は倒置になるとハイフンを入れます。「ami (友人)」は男性名詞で、複数形です(普通、友達は複数いるので、質問する場合にも複数形で聞きます)。この前の des は不定冠詞の複数です。
この答えの部分は、中性代名詞 en を使わないと次のようになります。

  Oui, j'ai des amis. (「はい、私は友達を持っています」)

この「友達」は「誰々さん」と特定されているわけではなく、漠然と何人かの友達を指していますので、代名詞に置き換える場合は中性代名詞 en を使います。
en に置き換わると動詞の直前に移動しますが、このとき、不定冠詞の複数 des と部分冠詞は後ろに残らず、必ず消えます

 × Oui, j'en ai des.

これは、もともと不定冠詞の複数 des と部分冠詞は情報量の少ない言葉なので、わざわざ後ろに残すほどのものではないからだと言えます。

同様に、冠詞の de も消えます。
例えば、上の例を否定文にし、中性代名詞 en を使わずに答えると次のようになります。

  Non, je n'ai pas d’amis. (「いいえ、私は友達を持っていません」)

「je」が主語(S)、「ai」が動詞(V)、「amis」が直接目的(OD)であり、否定文なので直接目的語の名詞の前に冠詞の de がついています(母音の前なのでエリジヨンにより e が ’に変わっています)。
これを、中性代名詞 en を使って書き換える場合、名詞の「amis」だけが en に置き換わって動詞の直前に移動し、de は消えて、次のようになります。

  Non, je n'en ai pas.

これを、

 × Non, je n'en ai pas de.

と言うことは絶対にありません。

4. 後ろに形容詞が残る場合 ( de + 形容詞

最後に、少し長い文を見てみましょう。18世紀の思想家J.-J.ルソーの言葉です。

  Tous les animaux ont exactement les facultés nécessaires pour se conserver. (すべての動物は、生存していくためにちょうど必要な能力を持っている)
  L'homme seul en a de superflues. 〔訳はのちほど〕

「Tous」は「すべての」ですが、冠詞の前に置く、少し変わった形容詞です。「animaux」は男性名詞「animal (動物)」の複数形。「exactement (ちょうど、まさに)」は副詞。「faculté (能力)」は少し理解しにくい言葉ですが、見る能力、聞く能力、走る(逃げる)能力などを指します。「nécessaire pour ~」で「~するために必要な」。「conserver (保存する)」は他動詞で、その直接目的が前の再帰代名詞「se」なので、逐語訳すると「自らを保存する」。つまり「自己保存する」、「生存していく」という意味です。
2 つめの文の「homme」はここでは「男」ではなく「人間」。「seul」は「だけ」。「a」は avoir の現在(3人称単数)。形容詞「superflu (余分な、余計な)」は、意味的に「facultés」(女性名詞の複数形)に係るので、女性複数の es がついています。
さて、この 2 つめの文は、中性代名詞 en を使わないと次のようになります。

  L'homme seul a des facultés superflues. (人間だけが、余計な能力を持っている)

この人間が持っている「facultés」(能力)は、他の動物が持っている能力ではないため(例えば計算する能力や、想像する能力など)、前に出てきた内容のもの(動物の持っている能力)を指すわけではありません。不特定の複数の能力を指すため、不定冠詞の複数 des がつきます。こうした不特定なものを置き換える場合は、中性代名詞 en を使います。
en に置き換わると動詞の直前に移動しますが、このとき、3. で見た通り、不定冠詞の複数 des は後ろに残らず、必ず消えます。そうすると、形容詞だけが残りますが、後ろに形容詞が残る場合は、新たに前置詞 de がつき、「de + 形容詞」が後ろに残るという規則があります。
この de は、不定冠詞の複数 des とはまったく関係のない前置詞の de で、後ろに置き去りにした形容詞を、いわば前の en と関連づけるために置くような、それ自体では意味のない言葉です。いずれにせよ、必ず de がつきます。

なお、この「中性代名詞 en その 2:不特定の同類の名詞を指す en 」は、基本的にもとの文で直接目的(OD)となる名詞に置き換わります(ただし例外として、être の属詞となる場合もあります)。以上で挙げた例文でも、すべて直接目的となっています(Il y a ~ の「~」の部分も直接目的です)。

中性代名詞 en 「その 1 」と「その 2 」の見分け方について

en の直後にくる動詞が他動詞(直接他動詞)である場合には、次の特徴によって見分けがつきます。

長くなりましたが、以上で中性代名詞の en は説明し尽くしました。
難解な文章でも、ほとんどすべて以上の説明で対応可能なはずです。

中性代名詞 y

中性代名詞 y は「à + 物」に置き換わります。
つまり、「中性代名詞 en その 1:「de + 物」に代わる en」と対比して捉えることができます。

1. 「à + 場所」に代わる(訳:「そこへ」「そこに」)

  Je vais à Paris. (私はパリに行く)

「vais」(行く)は自動詞 aller の現在(1人称単数)。「à」は前置詞で「~へ」「~に」(英語の「to」)。
この「Paris」を代名詞に置き換えようとすると、置き換えたい言葉の前に à があるので、中性代名詞 y を使います。
このとき、à を含めて(つまり「à + 物」が)中性代名詞 y に代わります
さらに y に置き換わると、動詞の直前に移動しますので、次のようになります。

  J'y vais. (私はそこに行く)

この「à + 場所」に代わる y は、厳密には中性代名詞というよりも「副詞」に分類することも可能です。英語の there に相当します。

この「à + 場所」に代わる場合に限り、「à 以外の前置詞 + 場所」も y に置き換わります。例えば、

  Je vais en France. (私はフランスに行く)

この「en」は名詞の前についているので前置詞の en です。
この文も、「フランス」を「そこ」に置き換えると、さきほどとど同じ文になります。

  J'y vais. (私はそこに行く)

2. 「à + 物」に代わる - à を伴う間接他動詞に係る

  J'ai répondu à cet e-mail. (私はその E メールに返事をした)

「ai」は助動詞 avoir の現在(1人称単数)、「répondu」は répondre (答える)の過去分詞。avoir + p.p. で複合過去になっています。この動詞は「répondre à ~(~に答える)」という使い方をする間接他動詞です。「cet」は指示形容詞。「e-mail」は英語からの外来語です。
この「e-mail」を代名詞に置き換えようとすると、置き換えたい言葉の前に「à」があるので、à を含めて中性代名詞 y に代わります。中性代名詞 y は動詞の直前に置かれますので、次のようになります。

  J'y ai répondu. (私はそれに返事をした)

3. 「à + 物」に代わる - à を伴う直接他動詞に係る

  On compare la vie à un cours d'eau. (人生は水の流れにたとえられる)

「On」は「人は」という意味なので、直訳すると「人は人生を水の流れにたとえる」となりますが、このように「On」は受身的に訳すと自然になります。「compare」は comparer の現在(3人称単数)。「comparer A à B (A を B に比較する・たとえる)」という使い方をする、直接他動詞(2)のタイプの動詞です。この文では、A が「la vie」、B が「un cours d'eau」です。「vie (人生、生活、生命)」は女性名詞。「cours (流れ)」は男性名詞。「eau (水)」は女性名詞ですが、「水の流れ」で一語化されて無冠詞になっています。
文の要素で分けると、「On」が主語(S)、「compare」が動詞(V)、「la vie」が直接目的(OD)、「un cours d'eau」が間接目的(OI)で、第5文型です。
この「un cours d'eau」が前の文脈で出てきたと仮定し、これを代名詞に置き換えたい場合は、その前に「à」があるので、à を含めて中性代名詞 y に代わり、動詞の直前に移動して、次のようになります。

  On y compare la vie. (人生はそれにたとえられる)

これも直訳すると「人は人生をそれにたとえる」です。

4. 「à + 物」に代わる - à を伴う形容詞に係る

à を伴う動詞は、原則として形容詞になっても à と一緒に使います。
さきほど出てきた「comparer」から派生した形容詞「comparable」も、「comparable à ~ (~に比較可能な、~にたとえられる)」というように à と一緒に使います(形容詞の末尾の「able」「ible」は「可能な」を表します)。この形容詞を使うと、さきほどの文は次のようにほぼ同じ意味に書き換えられます。

  La vie est comparable à un cours d'eau. (人生は水の流れにたとえられる)

この「un cours d'eau」を代名詞に置き換えたい場合は、その前に「à」があるので、à を含めて中性代名詞 y に代わり、動詞の直前に移動して、次のようになります。

  La vie y est comparable. (人生はそれにたとえられる)

中性代名詞 le

フランス語には全部で 3 種類の le があります。
この 3 つは、「どこに置くか」と「何を指すか」で区別が可能です。

種類どこに置くか何を指すか
(1)定冠詞(男性単数)の le男性名詞の直前
(2)人称代名詞の le
(3人称単数の直接目的)
他動詞の前単数の男性名詞 1 語
(3)中性代名詞の le1. 他動詞の前文脈全体
2. 繋合動詞の前形容詞属詞

ここでは中性代名詞の le について説明します(2 種類あります)。

1. 文脈全体を指す

他動詞の直接目的になり、文脈全体を指します。
この場合は「そのことを」という意味です。

  Je lui ai téléphoné. (私は彼 [彼女] に電話をした)
  Je l'ai fait par précaution. (私は念のためそうしたのだ)

1つ目の文の「ai téléphoné」は「avoir + p.p.」で複合過去。lui は間接目的なので、「彼」「彼女」の両方を指します。2つ目の文の「ai fait」も複合過去です。「par précaution」は「念のため」という熟語。
「Je」が主語(S)、「ai fait」が動詞(V)、「l'」が直接目的(OD)です。

2. 形容詞を指す

これは主に、会話ではなく書き言葉で使用します。
être またはそれに準じる動詞(いわゆる繋合動詞)とともに使用します。つまり、主に第2文型で使用します。

  Êtes-vous fatigué ? (あなたは疲れていますか?)
     - Oui, je le suis. (はい、疲れています)

「Êtes」は「être」の現在形(2人称複数)。疑問文なので、倒置になってハイフンがついています。「fatigué」は「疲れている」という形容詞ですが、性数の変化をしていないので、「あなた」は男の人だとわかります。
会話だと、答えの部分は

  Oui, je suis fatigué.

となります。「je」が主語(S)、「suis」が動詞(V)、「fatigué」が属詞(C)です。
これは書き言葉だと、形容詞「fatigué」が中性代名詞「le」に置き換わり、動詞の前に出て、さきほどの文になります。



【練習問題 - 中性代名詞】

(ヒントとして単語の意味を書いておきます)

1) 次の文を、中性代名詞 en を使わずに書き換えると、どうなりますか?

  Quand on parle du loup, on en voit la queue.

「Quand...」は接続詞で「...するとき」。「loup」は「狼(オオカミ)」。「du」は de と le の縮約形。ここでは「parler de ~ (~について話す)」の de です。「voit」は他動詞 voir (見る)の現在(3人称単数)。「queue」は「尻尾」で、la がついているので女性名詞です。

  ⇒ 正解はこちら

2) 次の文を、中性代名詞 en を使わずに書き換えると、どうなりますか?

  Qui court deux lièvres à la fois n'en prend aucun.

「Qui」は、「celui qui... (...する人は)」(英語の those who... に相当)の celui が省略された形です。「court」は不規則動詞 courir の現在(3人称単数)で、自動詞だと「走る」、他動詞だと「(走って)追いかける」という意味。「deux」は数詞で「2つ(の)」。「lièvre」は男性名詞で「兎(ウサギ)」。「à la fois」は「同時に」という熟語(英語の at the same time)。「prend」は他動詞 prendre (つかむ、捉える)の現在(3人称単数)。「ne... aucun ~」は「いかなる(一つの)~も... ない」

  ⇒ 正解はこちら

3) 次の文を、中性代名詞 en を使わずに書き換えると、どうなりますか?

  L'aboiement d'un chien en attire un autre.

「aboiement」は「(犬の)吠え声」。犬が「吠える」ことを「aboyer」と言いますが、その名詞の形です。このように語尾が「ment」で終わる名詞は、すべて男性名詞です。「attire」は他動詞「attirer (引き寄せる)」の現在(3人称単数)。「autre」は「他の」。

  ⇒ 正解はこちら

4) 次の文を、中性代名詞 le を使わずに書き換えると、どうなりますか?

  Il s'agit d'être grand, et non de le paraître.

「Il s'agit d'」については「Il s'agit de」の説明を参照。「grand (大きな、偉大な)」は形容詞。「non」は否定で英語の not に相当します。「paraître」は「~のように見える」。

  ⇒ 正解はこちら







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