前置詞
前置詞
フランス語で一番重要な前置詞は à と de です。それ以外は、基本的には英語に対応する前置詞があります。
このページでは、à と de を中心に、前置詞の間違えやすい意味・用法について取り上げます。
主な前置詞(英語との比較)
à と de 以外の前置詞については、英語と対応づけて捉えたほうが近道です。
発音 | 英語 | 日本語 | ||
場所 | sur | スュール | on | ~の上に |
sous | スー | under | ~の下に | |
devant | ドゥヴァン | in front of | ~の前に | |
derrière | デリエール | behind | ~の後ろに | |
entre | アントゥル | between | ~の間に | |
parmi | パルミ | among | ~の間に | |
dans | ダン | in | ~の中に | |
時間 | avant | アヴァン | before | 〔出来事〕の前に |
après | アプレ | after | 〔出来事〕のあとで | |
il y a | イリヤ | ago | 〔期間〕前に | |
dans | ダン | in | 〔期間〕後に | |
pendant | パンダン | during | 〔期間〕の間 | |
depuis | ドゥピュイ | since | ~以来 | |
関係 | avec | アヴェック | with | ~と一緒に |
sans | サン | without | ~なしに | |
contre | コントゥル | against | ~に反して | |
par | パール | by | ~によって | |
pour | プール | for | ~のために | |
comme | コム | as | ~として、~のように |
注記
1. この表は大雑把に英語と対応づけたものです。詳しくは辞書を参照してください。
2. 「il y a ~」は「~がある、存在する」という意味もありますが、後ろに期間を表す言葉がくると「~前に」という意味の前置詞(正確には前置詞句)になります。空間が時間に置き換わったような感じです。例えば、
il y a dix ans ( 10 年前に)
など、会話でもよく使われます。「dix」は数詞で「10」。「an」は「年」で、複数形の s がついています。この反対の表現は、
dans dix ans ( 10 年後に)
です(このように、時間的に「~後に」という場合は、前置詞 dans を使います)。
à と en について
à も en も、「~に」に相当する「場所」を表す前置詞ですが、どちらも、
一箇所に留まる「位置」
移動する「方向性」
の両方の意味があります。
後ろに国名がくる場合は、
a) 女性名詞の国(フランスなど)の場合は en を使用し、国名は無冠詞にします(一般に、前置詞 en の後ろは無冠詞になりやすい傾向があります)。
b) 男性名詞の国(日本など)の場合は à を使用し、国名は定冠詞 le をつけますが、必ず à と le の縮約形によって au となります。
1. 位置「~に」
- Elle est en France.
彼女はフランスにいる。
「est」は être の現在(3人称単数)。être は英語の be 動詞に相当し、ここでは「~である」ではなく「いる」という意味です。
- Je suis au Japon.
私は日本にいる。
「suis」は être の現在(1人称単数)。
2. 方向性「~に」
- Je vais en France.
私はフランスに行く。
「vais」は aller(行く)の現在(1人称単数)。
- Elle vient au Japon.
彼女は日本に来る。
「vient」は venir(来る)の現在(3人称単数)。
de の基本的な意味
前置詞 de は、
「~の」という所有(英語の of )
「~から」という出発点(英語の from )
の両方の意味があります。
最初のうちは、どちらの意味なのか、区別して考える必要があります。
1. 所有「~の」
- l'histoire de la France
フランスの歴史
学校の教科として意識される場合は、フランスの前を無冠詞にして l'histoire de France とします。ただし、フランス以外の国の歴史の場合は、必ず国名に定冠詞をつけます(これについては例えば『プログレッシブ仏和辞典』の histoire の項目に記載されています)。
- l'histoire du Japon
日本の歴史
「du」は de と le の縮約形。
2. 出発点「~から」
venir de ~ 「~から来る」の後ろに女性名詞の国がくる場合は、国名は無冠詞にします。男性名詞の国の場合は定冠詞をつけます。
- Elle vient de France.
彼女はフランスから来る。
「vient」は venir(来る)の現在(3人称単数)。
- Je viens du Japon.
私は日本から来ました。
「viens」は venir(来る)の現在(1人称単数)。
現在形は近い過去も表すことができるので、文脈によっては「~から来ました」という意味になります。
不定詞の前につく de
動詞を「~すること」という名詞のような意味にする場合、英語では不定詞の前に to をつけますが、フランス語では de をつける場合とつけない場合があります。
少し規則が面倒ですが、とりあえず次の 3 つの規則を、下記の 3 つの例文の形で覚えるとよいと思います。
規則 1
文頭では de をつけないほうが多い(→例文 A)。
ただし、個別・具体的な内容の場合は de をつけることもある。
規則 2
第 2 文型の属詞は、
主語が不定詞の場合は、de はつけない(→例文 A)。
主語が不定詞以外の場合は、de をつける(→例文 B)。
規則 3
比較の que の後ろでは de をつける(→例文 C)。
ただし、不定詞同士を比較する場合は de は省略可能。(⇒ 例文(諺))
- 例文 A
Voir, c'est croire.
見ること、それは信じることだ。
これは英語の Seeing is believing. のフランス語訳で、日本の諺「百聞は一見に如かず」に相当します。
「Voir」は文頭にあるので de はつけません(規則 1 による)。
不定詞が主語になっているので、属詞「croire」には de はつけません(規則 2 による)。
細かく言うと、「Voir」は文頭に遊離しており、これを指示代名詞 ce で受け直している形になっていますが、大雑把にいえば「Voir」も「c'」も、どちらも主語だということができます。
- 例文 B
Le mieux est d'attendre.
最もよいことは待つことだ。
「mieux」は形容詞 bien(良い)の比較級・最上級で、ここは定冠詞がついているので最上級です。最上級が名詞化されて「最も~なもの」となっています。
「Le mieux」が主語、「est」が動詞、「d'attendre」が属詞で、第 2 文型になっています。
主語が不定詞以外なので、「attendre(待つ)」には de をつけます(規則 2 による)。
- 例文 C
Aimer est aussi naturel que de boire et de manger.
愛することは飲むことや食べることと同じくらい自然なことだ。
これはロマン主義の作家ミュッセの言葉です。
「Aimer」は文頭にあるので de はつけません(規則 1 による)。
「naturel」は形容詞で「自然な」。「aussi ~ que...」は「...と同じくらい~な」。
「boire」は「飲む」、「manger」は「食べる」。この 2 つが「et(と)」によって並列になっています。比較の que の後ろなので、「boire」と「manger」に de がついています(規則 3 による)。
分量の de
前置詞 de には色々な意味・用法がありますが、ここでは、知らないとわかりにくい、「分量」(数量、程度)を表す de を取り上げます。
例えば「50 % 増える」というのは、次のように言います。
- augmenter de 50 %
「augmenter」は「増やす」、「増える」。
ちなみに「50 %」は「cinquante pour cent」(サンカントゥ プール サン)と発音します。「パーセント」はもともと「pour cent」(プール サン)つまり「100 に対して」という意味のフランス語で、これが英語に入り、日本語にも入っています。
この de は 50 % 分増える、50 % だけ増える、という感じです。
英語だと「increase by 50 %」となり、この英語の by と同じです。
この de は、比較級と組み合わせてもよく使われます。例えば、「比較級と最上級」のページで、次のような例文を取り上げました。
これに「10 センチ」という言葉を入れると次のようになります。
- Paul est plus grand que Pierre de dix centimètres.
ポールはピエールよりも 10 センチ背が高い。
「10 センチだけ」高い、という感じです。ただし、「だけ」といっても、必ずしも「少ない」という意味ではありません。「10 センチ分」高い、という意味です。この分量が小さいときは、「だけ」という言葉がぴったりきます。
代名詞 + de + 形容詞
quelque chose(何か)や rien(何も...ない)などの、いわゆる「不定代名詞」(またはそれに似た漠然とした代名詞)に形容詞がつく場合は、形容詞の前に前置詞 de を入れます。
例えば「spécial(特別な)」という形容詞でいうと、次のようになります。
フランス語 | 英語 | |
quelque chose de spécial | 何か特別なこと(もの) | something special |
rien de spécial | 何も特別なこと(もの)はない | nothing special |
その他、次のような表現で出てくる de + 形容詞も、これと同じ de です(少し難しい話になります)。
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