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形容詞

形容詞     関連ページ:比較級と最上級

形容詞の性数の変化

 1. 女性形と複数形

形容詞は、名詞に合わせて次のように変化します。
ちなみに、過去分詞の性数の一致でも、同じように変化します。

男性女性
単数-- e
複数- s- es

原則

男性女性
単数profondprofonde
複数profondsprofondes

例 1 :「profond (深い)」

  • もともと語尾が「s」の形容詞は、複数形も同じです。
    もともと語尾が「e」の形容詞は、女性形も同じです。
  • 子音で終わる形容詞は、女性形では子音を 2 つ重ねて「e」をつける場合があります。
    その他、女性形・複数形が少し不規則になる形容詞もありますが、辞書に書いてありますので、個別に覚えてください。不規則とはいっても、大まかな傾向はあり、だんだん慣れますので、あまり気にする必要はありません。

 2. 男性第二形

後ろの名詞が母音で始まる場合は、発音しやすくするため、例 2 と例 3 のように、カッコ内(赤字)の形になります。これを「男性第二形」と言います。
このような形になるのは、形容詞が名詞の前にくる場合だけです。
普通はフランス語の形容詞は名詞の後ろに置くので(後述)、この「男性第二形」は、それほど使われる頻度は多くはありません。

男性女性
単数beau
(bel)
belle
複数beauxbelles

例 2 :「beau (美しい)」

男性女性
単数nouveau
(nouvel)
nouvelle
複数nouveauxnouvelles

例 3 :「nouveau (新しい)」


形容詞の用法

 1. 性数の一致

形容詞には、
  前(または後ろ)の名詞に掛かる「付加的用法」(英語の限定用法)と、
  属詞になる「属詞的用法」(英語の叙述用法)
の 2 つの用法があります。

例えば、「japonais (日本の、日本人の)」という形容詞を例に取ると、

用法使い方何に一致するか例文
付加的
用法
前(または後ろ)の
名詞に掛かる
前(または後ろ)の
名詞に一致
une femme japonaise
  (日本人の女性)
属詞
用法
属詞になる主語に一致Elle est japonaise.
  (彼女は日本人だ)

「付加的用法」の場合は直前の女性名詞「femme (女性)」に一致し、「属詞的用法」の場合は主語「Elle (彼女)」に一致して、いずれも「japonais」に女性単数の e がついています。

 2. 付加的用法での形容詞の語順

付加的用法」の場合、形容詞は原則として名詞の後ろに置きます。

  la littérature française (フランス文学)

ただし、一部の短い形容詞は、名詞の前に置きます

  un jeune homme (若者、若い男)
  un bel homme (美しい男、美男子)

所有形容詞指示形容詞不定形容詞など、特殊な形容詞は名詞の前に置きます。

  mon livre (私の本)
  ce livre (この本)
  la même chose (同じもの、同じこと)

名詞の前に置くか後ろに置くかで意味が変わる形容詞もあります。

  un homme grand (背の高い男)
  un grand homme (偉人)

 3. quelque chose / rien de + 形容詞

quelque chose (英語の something に相当)は、もともと形容詞「quelque (何らかの)」と女性名詞「chose (もの)」で、合わせて「何らかのもの」、つまり「何か」という意味。
rien (英語の nothing に相当)は、普通は否定の ne と一緒に使われ、「何も(...ない)」という意味。
この 2 つの言葉に形容詞がかかる場合は、これらの言葉の後ろに「de + 形容詞」を置きます。

  quelque chose de nouveau (何か新しいこと)〔英語: something new〕
  rien de spécial (特別なものは何もない)〔英語: nothing special〕

「nouveau」は「新しい」、「spécial」は「特別な」という形容詞の男性単数の形です。
「chose」は女性名詞ですが、 de の後ろの形容詞は男性単数にします。

 4. 形容詞の名詞化

 (1)定冠詞 le + 形容詞「~なこと・~なもの」

le + 形容詞は「~なこと・~なもの」という意味になり、抽象概念を表します。

形容詞形容詞の名詞化
 essentiel (本質的な) l'essentiel (本質的なこと)
 important (重要な) l'important (重要なこと)
 visible (目に見える)
 invisible (目に見えない)
 le visible et l'invisible
 (目に見えるものと目に見えないもの)
 absolu (絶対的な) la recherche de l'absolu
 (絶対〔的なもの〕の探求)
 insupportable (耐えられない) supporter l'insupportable
 (耐えがたいことを耐える)

最後の例は、終戦の詔書(玉音放送)の「堪ヘ難キヲ堪ヘ、忍ビ難キヲ忍ビ」のあたりのフランス語訳にも使われる言葉です。

 (2)冠詞 + 人の性格などを表す形容詞「~な人」

人の性格などを表す形容詞に冠詞がつくと、「~な人」という意味の名詞になります。

  étranger (外国の) → un étranger, l'étranger (外国人)

 (3)国名の形容詞「~人」「~語」

大文字だと「~人」 (女性形・複数形も可能で、冠詞は文脈により異なる)
小文字だと「~語」 (必ず単数形で定冠詞をつける)

名詞形容詞形容詞の名詞化
La France
フランス
français
 フランスの
 フランス的な
 フランス人の
 フランス語の
 フランス語的な
un / le Français (男のフランス人)*
une / la Française (女のフランス人)*

le français (フランス語)

                         * 複数形も可能

国名だけでなく都市名・地方名でも、形容詞の大文字で「~(地方)の人」となり、基本的に冠詞がつきます。例:

  Parisien / Parisienne (パリの男性 / 女性)
  Alsacien / Alsacienne (アルザス地方の男性 / 女性)

 (4)名詞の省略

前出の名詞が省略されることで、結果的に形容詞が名詞化される場合もあります。

  Il aime le vin rouge. Moi, j'aime le blanc. (彼は赤ワインが好きだ。私は白が好きだ)

「aime」は他動詞 aimer (愛する)の現在(3人称単数)。「vin」は「ワイン」で、男性形の le がついているのでわかるように男性名詞。「rouge」は形容詞「赤い」。「Moi」は対比・強調する場合に使われる強勢形
「blanc」は形容詞「白い」ですが、ここでは「(ワインの)白」という意味で名詞化されています。これは、「vin」が省略されているからです。省略しないと、次のようになります。

  Il aime le vin rouge. Moi, j'aime le vin blanc.

 5. 形容詞の副詞的用法

多くの場合、主語の状態を表します。特徴は、省いても文が成り立つことです。例えば、次の文の「seul」は、省いても文の構造に影響を与えません。

  Il part seul en Afrique. (彼は一人でアフリカに出発する)

「part」は自動詞 partir (出発する)の現在(3人称単数)。「en」は場所を表す前置詞で「~で」「~へ」。「Afrique (アフリカ)」は女性名詞ですが、en の後ろなので無冠詞になっています。
「seul」は「ただ一つの(一人の)、唯一の」という意味の形容詞ですが、この場合は副詞的に「一人で」という意味になっています。
なお、この用法は「主語と同格」と説明されることもあります。

tout

  • 次のような形容詞のことを「不定形容詞」と呼ぶことがあります。
    • certain (ある、ある種の、いくつかの)
    • chaque (各々の、各~)
    • tout (すべての)
    • même (同じ)
    • aucun (いかなる~も)

いずれも、原則として名詞の前に置き、少し特殊な使い方をする、重要な形容詞です。
ここでは、「tout」について説明します。

  • tout の変化
男性女性
単数tout toute
複数tous toutes

男性複数で「t」が落ちていることに注意してください。

  • この形容詞は、冠詞の前に置きます(冠詞が入る場合)。
    これは英語の all が「all the country」のように the の前にくるのと似ています。
  • 単数・複数の区別と、使用する冠詞の種類によって、次のような意味になります。
    ある一つの物を取り上げて、それ「全体」という場合は単数形にします。
備考
複数定冠詞 *tous les paysすべての世界に存在する全部の国。
無冠詞tous paysすべての(文語的・熟語表現)
単数定冠詞 *tout le paysその国全体例えば「日本全国」。
不定冠詞tout un paysある国全体
無冠詞tout paysあらゆる
どの国も)
「chaque pays」とほぼ
同じ。英語の「every」。

      * 定冠詞の代わりに所有形容詞・指示形容詞を使うことも可能。

ちなみに、この例の「pays (国)」は、もともと末尾に「s」がつく男性名詞のため、単数も複数も同じ形です。

  • 「すべての」(tout, tous, toute, toutes)は ne... pas と組み合わせると部分否定になります( ⇒ 例文)。
    「全部否定」にするには、aucun ~ ne... 〔英語 any ~ not...〕や rien 〔英語 nothing〕などを使います。
  • この形容詞が名詞化すると「不定代名詞」となり、次のような意味になります(男性単数と男性複数のみ)。
男性単数tout すべてのもの= toutes les choses
男性複数tous すべての人、皆= tout le monde

なお、フランス語の語末の s や t は発音しないのが原則ですが、この不定代名詞の「tous」は、わざと末尾の「s」も発音し、強めに「トゥス」と発音します(形容詞の「tous」では末尾の「s」は発音しません)。

même

même には主に 3 つの意味がありますが、どの位置に来るかによって、外見的に見分けがつきます。

 (1)形容詞「同じ」(英語の (the) same

普通、名詞の前に置いて、「定冠詞(le, la, les) + même + 名詞」という順で出てきます。ただし、冠詞は不定冠詞のこともあります。
また、前置詞 de や en の後ろでは無冠詞になることもあります。例えば、
  de même ordre (同じ種類の)
  en même temps (同時に)

 (2)副詞「~さえ」(英語の even

通常は強調したい言葉の直前・直後に置きます。例えば、

  Même un enfant peut le comprendre. (子供でさえそれを理解することができる)

「enfant」は「子供」。「peut」は pouvoir (~できる)の現在(3人称単数)。「le (そのことを)」は何か一語ではなく文脈全体を受けるので中性代名詞です。「comprendre (理解する)」は pouvoir の後ろなので不定詞になっています。
要するに、「子供だってそんなことくらい分かる」という意味です。

 (3)「まさに~」「~そのもの」

強調したい言葉〔=名詞または副詞〕の直後に置きます。これは形容詞とも副詞とも取れます。
  ici même (まさにここで)
  ce soir même (まさに今夜)
  Le style est l'homme même. (文は人なり)

最後の文はビュフォンという人が残した名言で、逐語訳すると「文体は人間そのものだ」ですが、伝統的に「文は人なり」と訳されており、「文章には書き手の人柄が滲み出る」というような意味に解釈されています。「style」は「スタイル、様式、文体」、「homme」は「人間」です。
また、
  moi-même (私自身)
  toi-même (君自身)
  lui-même (彼自身、〔男性名詞を受けて〕それ自身)
  elle-même (彼女自身、〔女性名詞を受けて〕それ自身)
など、人称代名詞の強勢形と même をハイフンで結んでできる言葉も、この(3)の意味に由来します。

フランス語の習い始めでは、何でも「同じ」と訳してしまう傾向にありますが、「~さえ」の意味になることがかなり多く、出てくる頻度は、(1)が 5 割、(2)が 4 割、(3)が 1 割ぐらいのつもりでいたほうがよいでしょう。

その他、même を使った熟語としては、
  de même (同様に)
  de même que... (...と同様に)
などが重要です。








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