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北鎌フランス語講座 - 文法編「6文型」

6文型

自動詞と他動詞

英語では、同じ動詞が自動詞と他動詞を兼ねる場合が少なくありませんが、フランス語では、自動詞か他動詞かどちらかだけという場合のほうが多いといえます。それだけフランス語は自動詞と他動詞の区別にうるさい言葉だと言えるでしょう。

さらに「自動詞」と「他動詞」の中間のような「間接他動詞」が存在するというのが、フランス語特有の点で、これが非常に重要になります。「間接他動詞」というのは、必ず特定の前置詞(ほとんどが à または de)とセットで使用する動詞のことです。

英語だと、自動詞は色々な前置詞とセットで使いますが、フランス語の間接他動詞では基本的に「à」と「de」だけとセットになります。

なぜこれが重要かというと、例えば「de + 物」ならフランス語特有の中性代名詞en」や関係代名詞dont」に代わり、「à + 物」なら中性代名詞y」や関係代名詞auquel」に代わりますが、その前提として間接他動詞の存在を認識しておく必要があるからです。

自動詞目的語を伴わない
他動詞間接他動詞特定の前置詞(à か de)を介して目的語を伴う
直接他動詞前置詞を介さずに目的語を伴う

単に「他動詞」と言った場合は、「直接他動詞」を指します。

この 3 分類をもう少し細かくすると、次の動詞の6分類になります。

動詞の6分類

この動詞の6分類は、「6文型」に対応しています。つまり、どの動詞を使うかによって、どの文型になるかが決まるわけです。



(1)aller(行く), dormir(眠る),
pleuvoir(雨が降る)
第1文型
(2)繋合動詞être(~である), paraître(~のように見える), rester(~のままである)第2文型


間接他動詞ressembler à~(~に似ている),
dépendre de~(~次第だ)
第4文型
直接
他動詞
(1)avoir(~を持っている), aimer(~を愛する), construire(~を作る)第3文型
(2)donner A à B(AをBに与える),
éloigner A de B(AをBから遠ざける)
第5文型
(3)trouver A B(AがBだと思う),
rendre A B(AをBにする)
第6文型

この表のうち、耳慣れないかもしれない「繋合(けいごう)動詞」というのは、「繋(つな)ぎ合わせる動詞」という意味です。つまり「A は B である」というように、A と B をイコールで「繋ぎ合わせる」わけです。具体的には、être またはそれに準じる動詞を指します。

「間接他動詞」と「直接他動詞(2)」は、どちらも特定の前置詞(à か de)とセットで使用します。違いは、

  • 間接他動詞」の場合は、動詞と前置詞の間に目的語は入れない
    (例えば ressembler と à の間には目的語は入れない)
  • 直接他動詞(2)」の場合は、動詞と前置詞の間にも目的語(直接目的語)を入れる
    (例えば「donner A à B」で「donner」と「à」の間にも目的語「A」を入れる)

という点です。

6文型

英語は5文型ですが、フランス語は6文型に分類されます。つまり、1つ多いわけです。何が多いかというと、第4文型です(さきほどの「間接他動詞」を使う文型です)。

第1文型S VVは自動詞Il va à Paris. Il va en France.
第2文型S V CVは繋合動詞Il est gentil. Il est étudiant.
第3文型S V ODVは直接他動詞(1)Il a un dictionnaire.
第4文型S V OIVは間接他動詞La réussite dépend de vos efforts.
第5文型S V OD OIVは直接他動詞(2)Je donne ce dictionnaire à Pierre.
第6文型S V OD CVは直接他動詞(3)Je trouve ce livre intéressant.


  • 第1文型(S + V)

  Il va à Paris.(彼はパリに行く) 

  Il va en France.(彼はフランスに行く)

va は自動詞 aller(行く)の現在(3人称単数)です。
文の要素で分けると、「Il」が「主語(S)」、「va」が「動詞(V)」になります。
「à Paris(パリに)」や「en France(フランスに)」は、いわば「付けたし」で、状況によって色々と変化します。こういう要素を「状況補語」と呼びます。

  • 第2文型(S + V + C)

  Il est gentil.(彼は優しい)

  Il est étudiant.(彼は学生です)

「est」は自動詞 être(~である)の現在(3人称単数)です。
文の要素に分けると、「Il」が「主語(S)」、「est」が「動詞(V)」で、形容詞の「gentil(優しい)」や名詞の「étudiant(学生)」が「属詞(C)」。
属詞」というのはフランス語文法特有の用語ですが、英語の「補語」と同じです。詳しくは下記「文の要素について」を参照してください。

第2文型では、S と C がほぼイコールになります(彼=優しい、彼=学生)。
このように、S と C をほとんどイコールで繋ぎ合わせる動詞のことを「繋合動詞」と呼びます。
この「属詞(C)」の部分には、基本的に形容詞がきます。「étudiant」も、いわば形容詞的に使われているので、無冠詞だといえます。

  • 第3文型(S + V + OD)

これは理解しやすいと思います。

  Il a un dictionnaire.(彼は辞書を持っている)

「Il」が「主語(S)」、「a」が他動詞 avoir(持っている)の現在(3人称単数)で「動詞(V)」、「un dictionnaire(一冊の辞書)」が「直接目的(OD)」です。

ただし、例外的に、他動詞なのに直接目的が省略される場合もあります。

  • 第4文型(S + V + OI)

  La réussite dépend de vos efforts.(成功はあなたの努力次第だ)

「réussite(成功)」は女性名詞なので冠詞 la がついています。「efforts」は名詞「effort(努力)」の複数形で、所有形容詞「vos(あなたの)」がついています。
「dépend」は「dépendre」の3人称単数。「dépendre de~」で「~次第だ」の意味。「dépendre」は基本的に必ず前置詞「de」とセットで用います。
文の要素に分けると、「La réussite」が「主語(S)」、「dépend」が「動詞(V)」、「vos efforts」が「間接目的語(OI)」です。
ちなみに「de」は前置詞で、前置詞は「文の要素」に分けるときはカウントしません。

第4文型はフランス語で鍵を握る文型です。第4文型で使用する間接他動詞は「de」か「à」とセットで用いますが、「de + 物」ならフランス語特有の中性代名詞en」や関係代名詞dont」に代わり、「à + 物」なら中性代名詞y」や関係代名詞auquel」に代わるからです。

  • 第5文型(S + V + OD + OI)

  Je donne ce dictionnaire à Pierre.(私はこの辞書をピエールに与える)

「donne」は他動詞「donner」の現在(1人称単数)。「ce」は「この」。
「donner A à B」で「AをBに与える」。目的語を2つとるわけです。「A」が直接目的、「B」が間接目的。この例文では「ce dictionnaire」が「A」、「Pierre」が「B」にあたります。
文の要素で分けると、「Je」が「主語(S)」、「donne」が「動詞(V)」、「ce dictionnaire」が「直接目的語(OD)」、「Pierre」が「間接目的語(OI)」です。
この文の受動態の作り方については、こちらに書いてあります。
この第5文型の場合、「donner A à B」の「A」と「à B」を逆にして「donner à B A」と言うことも可能です。つまり、

  Je donne à Pierre ce dictionnaire.

と言うこともできます。

もうひとつ例文を挙げましょう。

  Il charge un camion de pierres.

「charge」は「charger(積む)」の現在(3人称単数)。「camion」は「トラック」。男性名詞なので、その前の不定冠詞「un」は男性形になっています。「pierres」は「pierre(石)」の複数形で「s」が付いています。
この文は、「彼は石のトラックを積む」と訳しては意味が通じません。
実は、「charger」は「charger A de B」で「A に B を積む」という使い方をする、「直接他動詞(2)」のタイプの動詞なのです。この場合、A が「un camion」、B が「pierres」です。つまり、「彼はトラックに石を積む」となります。
さきほどの「donner A à B」(A を B に与える)の場合は、もともと「à」に「に」という意味がありますから誤解は生まれにくいのですが、この言いまわしでは単独で「に」という意味の単語はありませんから、「charger」という動詞とセットで、「charger A de B(A に B を積む)」という使い方をする動詞なのだと捉えるしかありません。
(ちなみに、「pierres」は無冠詞になっていますが、これは前置詞 de の後ろでは不定冠詞の複数 des が落ちるという規則によるものです)
このように、「A à B」「A de B」という使い方をするタイプの動詞が存在するということを理解していないと、複雑な文を正確に読み解くことはできなくなってしまいます。

  • 第6文型(S + V + OD + C)

  Je trouve ce livre intéressant.(私はこの本を面白いと思う)

「trouve」は他動詞「trouver」の現在(1人称単数)。「trouver」は直接他動詞(1)で「見つける」という意味もありますが、直接他動詞(3)で「trouver A B(AがBだと思う)」という意味にもなります。この例文では、「ce livre」が「A」、「intéressant」が「B」に相当します。
文の要素で分けると、「Je」が「主語(S)」、「trouve」が「動詞(V)」、「ce livre」が「直接目的語(OD)」、「intéressant」が「属詞(C)」です。
「属詞(C)」は第2文型でも出てきます。属詞は、第2文型では「主語(S)」とイコールになりますが、第6文型では「直接目的語(OD)」とイコールになります。つまり「ce livre(この本)= intéressant(面白い)」という関係が成り立つわけです。第2文型と同様、属詞は基本的に形容詞がきます。
第6文型の OD と C は、かなりの確率で順序が逆になります。この例文では、

  Je trouve intéressant ce livre.

と言うこともよくあります。

文の要素について

文の要素には、主に以下のものがあります。

  • 主語(S)

基本的に、すべての文には主語があります。第1~第6のすべての文型に含まれます。主語がないのは命令文だけです。倒置でない限り、文の先頭に置きます。

  • 動詞(V)

基本的に、すべての文には動詞があります。第1~第6のすべての文型に含まれます。

  • 属詞(C)

「属詞」とは、フランス語特有の文法用語で、「付する性質を表す言葉」という意味です。基本的には形容詞ですが、名詞のこともあります。
第2、第6文型で出てきます。第2文型では属詞は「主語(S)」とイコールになりますが、第6文型では「直接目的(OD)」とイコールになります。
詳しくは、「文法用語」のページの「属詞」の項目も参照してください。

  • 直接目的語(OD)

訳すと「~を」となる場合が多いですが、もちろんそうでない場合もたくさんあります。
正確には「動詞の目的語となっていて、前に前置詞がついていない」言葉のことです。第 3、第5、第6文型で出てきます。
詳しくは、「文法用語」のページの「直接目的語」の項目も参照してください。

  • 間接目的語(OI)

訳すと「~に」となる場合が多いですが、もちろんそうでない場合もたくさんあります。
正確には「動詞の目的語となっていて、前に前置詞がついている」言葉のことです。
第 4、第5文型で出てきます。
詳しくは、「文法用語」のページの「間接目的語」の項目も参照してください。

直接目的と間接目的を区別することの重要性は、フランス語では英語よりもはるかに大きくなります。これは、例えば人称代名詞の 3 人称(単数・複数)で直接目的と間接目的を厳密に区別することからもわかります(英語では区別しません)。
また、過去分詞の性数の一致(avoir + p.p. の場合)でも、直接目的(OD)の場合だけ一致をします。
あるいは、関係代名詞の que は先行詞が関係詞節内の動詞の意味上の直接目的(OD)の場合に使用します。
これ以外でも、構文を把握する上で、直接目的と間接目的の区別は避けて通ることはできません。

  • 状況補語

主要な文の要素は上記の 5 つ(S、V、C、OD、OI)で、それ以外の文の要素は、おおむね「状況補語」になります。文の副詞的要素で、「状況に応じて補う言葉」という意味です。構文上は重要ではないため、カッコに入れることができる、付け足しの言葉です。
詳しくは、「文法用語」のページの「状況補語」の項目も参照してください。

なお、前置詞や副詞は、文の要素に分けるときにはカウントしません。

  例外:他動詞なのに目的語を省略

他動詞なのに、例外的に目的語を省略することがあります(これを「他動詞の絶対的用法」と呼ぶことがあります)。
特に第 3 文型で、「直接他動詞」なのに直接目的語(OD)を省略するというケースが比較的多く見られますが、間接目的語(OI)が省略されることもあります。
具体的には次のような場合に省略されます。

  • 言わなくてもわかる場合
  • 目的語によって意味内容を限定せずに、動詞のもつ意味全体を表したい場合

  ⇒ 例文(諺)







 

  • 注記:
    フランス語を「文型」で捉える考え方は、たとえば『ロワイヤル仏和中辞典』巻末の「文法要覧」には「基本文型」として6種類の文型が記載されていますが、それ以外の参考書類ではほとんど触れられておらず、フランス語を理解する上での鍵になるものとして中心的に取り上げているのは本ホームページのオリジナルといえるかと思います。










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