比較級と最上級
比較級と最上級 関連ページ:暗黙の比較と呼応の表現
形容詞・副詞の比較級
英語のように、語尾を -er, -est と変化させて比較級にする方法はありません。
どの形容詞も副詞も、英語の more と less に相当する plus と moins をつけて比較級にします。
「~よりも」(英語の than)は「que」を使います。これは「比較の que 」と呼ばれます。
フランス語 | 英語 | |||
1 | 優等比較 | plus 形・副 que ~ | more 形・副 than ~ | |
2 | 劣等比較 | moins 形・副 que ~ | less 形・副 than ~ | |
3 | 同等比較 | 肯定 | aussi 形・副 que ~ | as 形・副 as ~ |
4 | 否定 | (ne... pas) aussi / si 形・副 que ~ | (not) as / so 形・副 as ~ |
「est」は être の現在(3人称単数)。「grand」は形容詞で、「大きな、偉大な」という意味もありますが、ここでは「背が高い」という意味です。
この文は、裏返せば、次のように言っても同じです。
「moins」は英語の less と同じです。辞書には「より少なく...だ」と書いてありますが、直訳すると「ピエールはポールよりも、より少なく背が高い」となり、わかりにくくなります。
これは「劣等比較」と呼ばれるもので、要するに否定を含んだ比較の表現であり、
moins = ne pas plus (英語 less = not more)
ということができます。
つまり、この文は次のように言い換え可能です。
Pierre n’est pas plus grand que Paul. (ピエールはポールよりも背が高くない)
このように、動詞を ne と pas で挟むと、否定文になります。
以上 3 つの文は、だいたい同じ意味になります。
3 Il est aussi grand que moi. (彼は私と同じくらい背が高い)
「moi」は人称代名詞の強勢形で「私」。
比較の que の後ろでは、代名詞は必ず強勢形になります。
4 Elle n’est pas aussi grande que moi. (彼女は私と同じほど背が高くない)
形容詞 grand は、主語である Elle (彼女)が女性単数なので e がついています。
形容詞は、「属詞的用法」の場合は主語に合わせて性数の一致をするからです。
この文は、次のように言うこともできます。
Elle n’est pas si grande que moi. (彼女は私と同じほど背が高くない)
名詞の比較級
名詞の比較級の場合は、名詞の前に de がつきます。
この de は、beaucoup de ~ (多くの~)というときの de に似た感覚です。
フランス語 | 日本語 | |||
1 | 優等比較 | plus de 名詞 que ~ | ~よりも多い〔名詞〕 | |
2 | 劣等比較 | moins de 名詞 que ~ | ~よりも少ない〔名詞〕 | |
3 | 同等比較 | 肯定 | autant de 名詞 que ~ | ~と同じだけの〔名詞〕 |
4 | 否定 | (ne... pas) autant / tant de 名詞 que ~ | ~と同じほどの〔名詞〕 (は... ない) |
1 Paul a plus de livres que Pierre.
(ポールはピエールよりも多くの本を持っている)
「a」は他動詞 avoir (持つ)の現在(3人称単数)。
「livres」は男性名詞 livre (本)に複数形の s がついた形です。
この文は、裏返せば、次のように言っても同じです。
2 Pierre a moins de livres que Paul.
(ピエールはポールよりも少ない本を持っている)
要するに「ピエールのほうがポールよりも持っている本の数が少ない」ということです。
さきほどと同様、
moins = ne pas plus
なので、この文は次のように言い換え可能です。
Pierre n’a pas plus de livres que Paul.
(ピエールはポールよりも多くの本を持っていない)
以上 3 つの文は、だいたい同じ意味になります。
3 J'ai autant de livres que lui.
(私は彼と同じだけの本を持っている)
「lui」は人称代名詞の強勢形で「彼」。
比較の que の後ろでは、代名詞は必ず強勢形になります。
4 Je n’ai pas autant de livres que toi.
(私は君と同じほど本は持っていない)
「ai」は他動詞 avoir (持つ)の現在(1人称単数)。
「toi」は人称代名詞の強勢形で「君」。
この「同等比較の否定」の場合は autant の代わりに tant を使って次のように言うこともできます。
Je n’ai pas tant de livres que toi.
(私は君と同じほど本は持っていない)
「tant de ~」は「それほど多くの~」という意味で、英語の such に相当します。
最上級
1. 作り方
フランス語 | 英語 | |
優等最上級 | 定冠詞 plus 形・副 (de...) | the most 形・副 (in / of) |
劣等最上級 | 定冠詞 moins 形・副 (de...) | (the least 形・副) (in / of) |
例えば、
le plus beau (最も美しい)
le plus heureux (最も幸福な)
このうち、 plus (および moins)は副詞なので性数の変化はありませんが、定冠詞は le, la, les と変化し、形容詞(beau, heureux など)も女性形や複数形に変化します。
何に合わせて変化するのかは、次の項目を参照してください。
2. 形容詞の最上級の基本的用法
「定冠詞 + plus (または moins) + 形容詞」全体が一つの形容詞のようになって、普通の形容詞と同様、
します。以下で詳しく見ていきましょう。
(1)属詞的用法
「属詞的用法」とは、要するに S + V + C などの C になる用法のことです。
Il est le plus beau. (彼が最も美しい)
「beau」は男の人について使うと「ハンサムな」「美男子の」という意味になります。
「Il (彼は)」が主語(S)、「est (~である)」が動詞(V)、「le plus beau」全体が属詞(C)です。
上の文の主語を「Elle (彼女)」にすると、定冠詞と形容詞が次のように変化します。
Elle est la plus belle. (彼女が最も美しい)
このように、「属詞的用法」の場合は、主語に合わせて定冠詞と形容詞を女性形・複数性に変化させる必要があります。
(2)付加的用法
「付加的用法」とは、前(または後ろ)の名詞に掛かる用法のことです。
付加的用法では、形容詞は原則として名詞の後ろに置きますが、一部の短い形容詞は名詞の前に置きます。
次の表の左上の「bel」は beau (美しい)の「男性第二形」です。
名詞の前に置く形容詞 | 名詞の後ろに置く形容詞 | |
男 | le plus bel homme (最も美しい男) | l’homme le plus heureux (最も幸福な男) |
女 | la plus belle femme (最も美しい女) | la femme la plus heureuse (最も幸福な女) |
表の左側のように名詞の前に置く場合は問題ないのですが、表の右側のように名詞の後ろに置く場合は、定冠詞を 2 回使うので注意が必要です。例えば、表の右上の
の場合、「plus」の前の「le」は最上級を作る le ですが、「homme」の前についている「l’」は、最上級によって 1 つしかないものとして特定・限定されるので定冠詞がついています。このように、定冠詞を 2 回使うのが原則です。
なお、最上級を用いた表現で「~の中で」と言うときは、前置詞 de を使います(前置詞 entre も使用可能)。逆に言うと、「de」は最上級と一緒に使うと「~の中で」という意味になります。
(3)もうひとつの付加的用法
「最も美しい男」「最も幸福な女」などの名詞に掛かる形容詞の最上級の表現は、実はもうひとつあります。
名詞の前に置く形容詞 | 名詞の後ろに置く形容詞 | |
男 | le plus beau des hommes (最も美しい男) | le plus heureux des hommes (最も幸福な男) |
女 | la plus belle des femmes (最も美しい女) | la plus heureuse des femmes (最も幸福な女) |
左上の「le plus beau des hommes」の des は de と les の縮約形で、この de は「~の中で」という意味です。そして、「beau」の後ろには名詞「homme」が省略されています。つまり、逐語訳すると「男たちの中で最も美しい男」となります。
同様に、例えば右下の「la plus heureuse des femmes」も、逐語訳すると「女たちの中で最も幸福な女」です。
このように、「le (la) plus 形容詞 des 名詞」という表現の場合は、名詞が省略されているため、「名詞の前に置く形容詞」も「名詞の後ろに置く形容詞」も同じ形になります。
3. one of the most... の表現
「世界で最も美しい男たちの一人」という場合、英語では次のように言います。
one of the most beautiful men in the world
フランス語では次のように言います。英語とほとんど一対一で対応しています。
un des plus beaux hommes du monde
末尾の「du monde」は「世界の中で(世界で)」という意味です。さきほど触れたように、「~の中で」と言うときは前置詞 de を使いますが、「monde (世界)」は男性名詞で定冠詞 le がつくため、de + le の縮約形で du になっています。
ただし、付加的用法で名詞の後ろに置く場合は、少し変わった形になります。
名詞の前に置く形容詞 | 名詞の後ろに置く形容詞 | |
男 | un des plus beaux hommes du monde (世界で最も美しい男たちの一人) | un des hommes les plus heureux du monde (世界で最も幸福な男たちの一人) |
女 | une des plus belles femmes du monde (世界で最も美しい女たちの一人) | une des femmes les plus heureuses du monde (世界で最も幸福な女たちの一人) |
例えば表の右上の「les plus」の les は最上級にするための定冠詞ですが、その前の「un des hommes」の des は de と les の縮約形で、ここにも les が入っています。さきほどと同様、最上級によって特定・限定されるので定冠詞がついており、定冠詞を 2 回使っているわけです。
定冠詞の代わりに所有形容詞をつけても最上級になります。
Mon plus grand plaisir est la lecture. (私の最も大きな喜びは読書だ)
「grand」は「大きな」。「Mon (私の)」が男性形なのでわかるように、「plaisir (喜び)」は男性名詞。「est」は être (~である)の現在(3人称単数)。「lecture (読書)」は「la」がついているのでわかるように女性名詞。
5. 副詞の最上級は無変化
副詞の最上級の場合は、定冠詞は le だけで、一致はしません。
Elle marche le plus vite. (彼女は最も速く歩く)
「marche」は自動詞 marcher (歩く)の現在(3人称単数)。「vite」は副詞で「速く」。「Elle (彼女)」が主語ですが、「le plus (最も)」は副詞(vite)にかかっているため、 le が la になることはありません。
定冠詞が(la や les ではなく) le で、なおかつ(副詞ではなく)形容詞の最上級の場合は、最上級が名詞化されて「最も~なもの」という意味になることがあります。
これは、「le + 形容詞」で名詞化されて「~なこと・~なもの」という意味になるからです。
この場合の le は、比較級の前に置いて「最上級を作る」時の le と、「le + 形容詞」で名詞化する時の le を兼ねることになります。
逐語訳すると「2 つの中で ~が最も ...だ」というように「2 つの中で」比較する場合でも、最上級を使用します(英語も同様)。
この場合、日本語だと「2 つの中で ~のほうが ...だ」と訳したほうがぴったりきます。
特殊な形の比較級・最上級
英語の good, better, best のように、特別な形になる形容詞・副詞もあります。
比較級・最上級 | ||
形容詞 | bon (良い) | meilleur |
mauvais (悪い) | pire | |
petit (小さい) | plus petit, moindre ⇒ 例 | |
形・副 | bien (良い、良く) | mieux |
副詞 | mal (悪く) | plus mal, pis |
- meilleur, pire, moindre は、(付加的用法で)名詞の前に置くタイプの形容詞です。
- meilleur のみ形容詞の性数の一致をします(女性なら e がつき、複数なら s がつきます)。
【関連ページ】
⇒ 暗黙の比較と呼応の表現
⇒ 比較の表現 (読解編)
Vous êtes le 251645ème visiteur sur cette page.
aujourd'hui : 3 visiteur(s) hier : 50 visiteur(s)