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フランス語関係代名詞 II

関係代名詞 II

このページでは、「関係代名詞」のページで取り上げきれなかったことについて説明します。

接続詞 que と関係代名詞 que の見分け方

英語の that と同様、フランス語の que は接続詞にも関係代名詞にもなります。ただし、英語の that は省略されることが多いのに対し、フランス語の que は絶対に省略されませんので、原則を理解すれば、英語よりも楽だと思います。

  • 接続詞の que... は、「...」の部分に「小さな主語(S)と動詞(V)を含むグループ」(=節)がきて、que... 以下全体で「...ということ」という意味になり、一つの名詞と同じ役割を果たします(これを「名詞節」と呼びます)。例えば、

  Je crois qu'il l'aime. (私は彼が彼女のことを愛していると思う)

「crois」は croire (思う)の現在(1人称単数)。「qu'」は後ろに母音がくるために「e」が「'」になった形です。
「qu'」の後ろだけ取り出すと、「il l'aime (彼は彼女のことを愛している)」となります。「il」が小さな主語(S)、「aime」が小さな動詞(V)、そして aimer (愛する)が他動詞のため「l'」が小さな直接目的(OD)になっています。S + V + OD の第3文型です。このように、
que の後ろだけで文が完結していたら接続詞です。

  • それに対して、関係代名詞の que は、先行詞が「関係詞節内の動詞の意味上の直接目的(OD)」の場合に使用します。例えば、関係代名詞 que の例文で見たように、

  J'ai vu la femme qu'il aime.

の「qu'」の後ろは、「il」が小さな主語(S)、「aime」が小さな動詞(V)で、この動詞の直接目的(OD)は「qu'」の前に出て先行詞「la femme」になっています。このように、
que の後ろだけで文が完結していなければ(ODが欠けていれば)関係代名詞
です。

先行詞が関係詞節内の動詞の OD ではない que

関係代名詞 que は、先行詞が「関係詞節内の動詞の意味上の直接目的(OD)」の場合に使用するのが大原則ですが、そうでない場合も若干あります( 1 % 程度)。

「関係代名詞の que でありながら、先行詞が関係詞節内の動詞の OD ではない」ケースは、細かく見るといくつか存在しますが、知らないと意味を取り違える可能性があるのは「先行詞が関係詞節内の動詞の属詞となる」場合だけなので、主にこれについて取り上げます。

 a) 先行詞が関係詞節内の動詞の属詞となる que

例えば、

  Il s'agit d'une chose incompréhensible qu'est l'amour.
    (それは愛という理解不可能なものに関することだ)

「Il s'agit de ~」は「それは~に関することだ」という決まり文句。「chose (物、こと)」は女性名詞。「incompréhensible (理解不可能な)」は形容詞。「amour (愛)」は男性名詞。
この文は、失恋した人にかける慰めの言葉として使えるかもしれません。
文法的に見ると、「Il s'agit de ~」は分解不可能なのでここでは扱いません。
先行詞は「une chose incompréhensible」。関係代名詞 que の後ろは、「est」が動詞(V)です。être はいわゆる「繋合動詞」で、「属詞」と一緒に使う、第 2 文型を作る動詞です。だとすると、その後ろの「l'amour」が「属詞」でしょうか? いいえ。もしこれが属詞だとしたら、先行詞が主語ということになり、関係代名詞は qui を使うでしょう。
実はこの文は倒置になっていて、「l'amour」が「est」の主語(S)で、先行詞の「une chose incompréhensible」が属詞(C)になっています。つまり、この部分は次の文がベースになっています。

  L'amour est une chose incompréhensible. (愛は理解不可能なものだ)

この S + V + C の C の部分が先行詞になって前に出て、関係代名詞 que を使っているわけです。
倒置にしないで普通の語順にすると、次のようになります。

  Il s'agit d'une chose incompréhensible que l'amour est.

ただ、もともと「関係代名詞の後ろでは倒置になりやすい」上に、これだと主語(l'amour)のほうが動詞(est)よりも長く、頭でっかちになります。それを避けるためにも、倒置になっていると思われます。

 b) 先行詞が「時」「距離・重量」になる que

このほか、先行詞が「時」「距離・重量」になる場合にも関係代名詞 que が使われることがあります。

先行詞が「時」を表す場合は où を使うのが原則ですが、例えば先行詞に不定冠詞がつくと、多くの場合、que が使われます。

  un jour que... (...したある日)

ただ、これらの que は接続詞との境界線が曖昧で、知らないで意味を取り違える可能性は低く、また多くは動詞との関係で個別に理解可能なため、ここではこれ以上取り上げません。

関係代名詞 où についての補足

以下は「関係代名詞」のページoù の項目に対する補足です。

 1. là où の là の省略

先行詞なしで où だけで場所を表し、「...するところで(は)」という意味で使われることがあります。これは、場所を表す副詞 là (そこで)の省略で、là où... と同じ意味です。

  ⇒ 例文

 2. d'où という形

関係代名詞 où の前に、「~から」という意味の前置詞 de (場所の起点を表す)がついた、d'où という形が使われることもあります。
d'où... は、次の 2 つの可能性があります。

 (1) 前置詞つき関係代名詞として「そこから」という意味になる場合
    (英語の from where に相当)

 (2) 前の文全体が先行詞で、「以上のことから」という意味になる場合
    (辞書で où を引くと熟語欄に記載されています)

 3. 先行詞に不定冠詞がつくと que を使用

先行詞が場所・時を表す場合でも、不定冠詞がつくと、普通は où ではなく que を使います。上記「先行詞が「時」「距離・重量」になる que 」を参照してください。

先行詞 ce

指示代名詞 ce は関係代名詞の先行詞になると、「...なもの」「...なこと」という意味になります英語の what (先行詞を含む関係代名詞)に相当します。主に、
  ce qui
  ce que
  ce dont
  ce + 前置詞(句)+ quoi
の形で出てきます。この最後の quoi の例文でも出てきましたが、ひとつ新しく例文を出しておきます。これは18世紀末のリヴァロールという人がフランス語について論じた文章の中の有名な言葉です。

  Ce qui n'est pas clair n'est pas français. (明晰ならざるものフランス語にあらず)

形容詞「français」は、ここでは「フランス語の」または「フランス語的な」の意味です。
「明晰でないものはフランス語ではない」、つまり「フランス語はきわめて明快な言語だ」という意味で(多少拡大解釈されて)使われます。
カッコに入る(関係詞節となる)のは、関係代名詞 qui の前から、2 つめの動詞である est の前(ただし否定の ne があるので、n' の前)までです。つまり、「qui n'est pas clair」の部分がカッコに入ります。「Ce」が小さな主語(S)、「est」が小さな動詞(V)、「clair (明るい、明晰な)」が小さな属詞(C)です。ここまで全体が大きな主語(S)となり、後ろの「est」が大きな動詞(V)、「français」が大きな属詞(C)となっています。

英語に訳すと、次のようになります。

  What is not clear is not French.

なお、先行詞 ce は、関係代名詞を使わずに 2 つの文に分けると cela になります

先行詞 celui, ceux

celui と ceux は関係代名詞の先行詞になると、それぞれ「...な人」「...な人々」の意味になります(英語の those who に相当)。
先行詞は「人」なので、「人」が先行詞になりうる関係代名詞と一緒に使います。

ただし、celui と ceux は関係代名詞の先行詞になっていても、前に出てきた名詞を指すという指示代名詞 celui の本来の使い方をする場合もたまにありますので、両方の可能性を考える必要があります。

  • celui (「...な人」、「...な者」)

  Celui qui sème le vent récolte la tempête. (風を蒔く者は嵐を収穫する)

これは、「争いの種を蒔くと(波風を立てると)、それが何倍にもなって返ってくる」という意味の有名な諺です。
「sème」は「(タネを)蒔(ま)く」という意味の semer の現在(3人称単数)。 semer は mener と同じ活用をし、活用の一部で e が è になります。「vent (風)」は前に le がついているのでわかるように男性名詞。「récolte」は récolter (収穫する)の現在(3人称単数)。「tempête (嵐)」は前に la がついているのでわかるように女性名詞です。
「qui sème le vent」がカッコに入ります。「Celui」が小さな主語(S)、「sème」が小さな動詞(V)、「le vent」が小さな直接目的(OD)。そしてここまで全体が大きな主語(S)となり、「récolte」が大きな動詞(V)、「la tempête」が大きな直接目的(OD)となっています。

  • ceux (「...な人々」)

  Ce cours est destiné à ceux qui souhaitent approfondir leurs connaissances en français.
   (この講座は、フランス語に関する知識を深めることを希望する人々に
   向けられている)

「cours」は、うっかり最後の s を複数だと思って辞書を引くと「cour (庭、宮廷、裁判所)」(英語 court)という違う名詞(男性名詞)になりますので、要注意です。ここでは直前に男性単数の「Ce」がついているのでわかるように、もともと s で終わる単語です。男性名詞「cours」は「流れ、講座」という意味(英語の course に相当)。
「destiné」は過去分詞で、この動詞は
  destiner A à B (A を B に運命づける、A を B に向ける)
という使い方をします。受動態になると
  A est destiné à B (A は B に運命づけられる、A は B に向けられる)
となります。上の例文では、A が「Ce cours」、B が「ceux」に相当します。
「qui」の前から文末までカッコに入ります(関係詞節になります)。「souhaitent」は他動詞 souhaiter (希望する)の現在(3人称複数)。「ceux (人々)」が複数なので、それに合わせて複数になっています。「approfondir (深める)」が不定詞なのは、「~すること」として名詞化されているからです(「souhaitent」の直接目的になっています)。
所有形容詞 leurs (彼らの)は意味的に「ceux (人々)」を指しています。「connaissance (知識)」は複数形で使うことの多い名詞で、「ses connaissances en ~」で「彼(女)の~に関する知識」となります( en は前置詞)。「français」はここでは名詞で「フランス語」ですが、前置詞 en の後ろなので無冠詞になっています。

celui qui の celui の省略

特に文頭でよく出てきますが、 celui を省略して qui だけで「celui qui」と同じ意味になることがあります。多少硬い文章で出てきます。簡潔で、引き締まった感じになります。
例えば、さきほどの諺は、次のように言われることもあります。

  Qui sème le vent récolte la tempête. (風を蒔く者は嵐を収穫する)

どちらかというと「celui」を省いて、このように言う場合が多いようです。発音上も、省いたほうが(12音節となって詩のアレクサンドランのようになり)調子がよくなります。

強調構文

フランス語の強調構文には次の2つの形があり、いずれも「~」の部分が強調されます。

(1)c'est ~ qui...もとの文の主語を強調する場合
(2)c'est ~ que...もとの文の主語以外の要素を強調する場合


強調構文の訳し方は、
  「...なのは~である」と(後ろから前に掛けて)訳すのが一般的ですが、
  「(ほかならぬ)~こそ...」という訳も覚えておくと便利です。

例えば、助動詞のページで取り上げた次の例文をベースにして、2通りに強調構文を作ってみましょう。

  Cette église a été construite au XIIIe siècle. (この教会は13世紀に建築された)
  • 強調構文(1)

もとの文の主語(ここでは「Cette église」)を強調するときには、「c'est ~ qui...」を使って c'est と qui の間に挟みます。

  C'est cette église qui a été construite au XIIIe siècle.

    「13世紀に建築されたのは、この教会である」または、
    「この教会こそが、13世紀に建築されたのだ」

例えば、ある地域に教会がいくつか建っていて、そのうち13世紀に建築されたのは、どの教会だろう? ということが話題になっている場合は、上のような強調構文を使うわけです。

【強調を解除する方法】
「C'est」と「qui」を省くだけで、強調構文ではない元の文になります。

  • 強調構文(2)

もとの文の主語以外の要素(ここでは「13世紀に」という「時をあらわす状況補語」)を強調するときには、「c'est ~ que...」を使って c'est と que の間に挟みます。

  C'est au XIIIe siècle que cette église a été construite.

    「この教会が建築されたのは、13世紀にである」または、
    「13世紀にこそ、この教会は建築されたのだ」

例えば、ある教会が何世紀に建築されたのかが話題になっている場合は、このような強調構文を使うわけです。

【強調を解除する方法】
強調構文ではない元の文にするには、「C'est」と「que」を省き、さらに、「C'est」と「que」の間に挟まった語句(主語以外の要素)を後ろのしかるべき位置に移動させる必要があります(移動せずに、そのままの語順でも構わない場合もありますが、後ろに移動させたほうが自然な文になる場合が多いでしょう)。
この例文では、時をあらわす状況補語が強調されて前に出てきているので、これを文末に移動させたほうが自然な文になります(普通は状況補語は文末に置きます)。

さて、強調構文で使われる qui と que は関係代名詞なのでしょうか?
もうご存知のように、関係代名詞 qui の先行詞は必ず qui の後ろの動詞の主語になり、関係代名詞 que の先行詞は必ず que の後ろの動詞の直接目的になります。
これに対し、強調構文の qui は、qui の直前の部分が「もとの文の主語」であるからよいとして、強調構文の que は、que の直前の部分が「もとの文の主語以外の要素」ですから直接目的とは限らず、関係代名詞の que とはズレます。
ですから、強調構文で使われる qui と que は、とりあえず関係代名詞とは別物であると思った方がよいでしょう。

ただし、ここから先はフランス文学専攻の人や、特に十八世紀以前のフランス語を読む必要のある人以外は知らなくてよいことですが、歴史的に見れば、強調構文の qui と que は、もともとは関係代名詞の qui と que であり、古くは qui と que 以外の関係代名詞、つまり dont や lequel などを使って強調構文を作ることもできました
しかし、19世紀以降、現代では、qui と que 以外の関係代名詞を用いた強調構文は、基本的に que を使って表現するようになりました。
そのため、18 世紀以前の古いフランス語においては(そして現代でも「古文調」の、つまり古めかしい文体で書かれた文章においては)、qui と que 以外の関係代名詞を用いた強調構文が出てくることがあります。
ですから、qui と que 以外の場合は、普通の関係代名詞として先行詞に掛けて訳してみて、どうしても文意が変だ、強調構文としか取れない、という場合には、強調構文と取ればよいでしょう。

【練習問題 - 強調構文
次の 2 つの文を、それぞれ太字の部分を強調する強調構文に書き換えると、どうなるでしょうか? (ヒントとして単語の意味を書いておきます)

1)  La présence de la mort donne un sens à la vie.

「présence」は「存在」。「mort」は「死」。どちらも抽象的な意味の名詞で、定冠詞がついています。「donne」は donner (与える)の現在(3人称単数)。「donner A à B (A を B に与える)」という使い方をします。「sens」(最後の s も発音します)は「方向、意味、感覚」。「vie」は「人生、生活、生命」。

2)  L'on peut trouver la plus grande solitude dans les villes les plus peuplées.

「L'on」の L' は意味はありません。「on」は、諺・格言では、わざと「人は」と訳すと、うまくいく場合があります。「peut」は pouvoir (~できる)の現在(3人称単数)。「trouver」は「見つける」。「la plus」は最上級の表現(英語の the most)。「grande」は grand (大きな)の女性形。「solitude」は「孤独」。「dans」は前置詞で「~の中に」。「villes」は女性名詞 ville (都市)の複数形。「les plus」も最上級。「peuplé」は「人の多い(人口の多い)」で、女性の複数を示す es がついています。

→ 正解はこちら













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