接続法による譲歩の熟語表現
接続法による譲歩の熟語表現
si ~ que S + V
「si ~ que S + V 」という表現は、接続法にする動詞が
(1)être (繋合動詞)の場合→「いかに(どれほど)~〔形容詞〕であろうとも」
(2)他動詞の場合→「いかに(どれほど)~〔副詞〕に ...しようとも」
という意味になります。
この意味になるのは、que の後ろの動詞を接続法にした場合です。
que の後ろの動詞を直説法にすると、
という、まったく別の意味になりますので、注意が必要です。
副詞 | 接続詞 | 名詞 | 接続法 | ||
1 | si | ~ (1)形容詞 (2)副詞 | que | S | V (1)être (2)他動詞 |
2 | aussi | ||||
3 | pour | ||||
4 | quelque | ||||
5 | tout | ||||
いかに どれほど | (1)~で | ~が | (1)あろうとも | ||
(2)~に | (2)しようとも |
注記:
a) si と aussi + 形容詞の場合のみ、 que を省いて S V を倒置にすることも可能。
b) tout は que... の後ろの主語に性数を一致させます。
c) tout の後ろのみ、 que... の後ろの動詞を直説法にすることも可能。
例えば、
Elle est très riche. (彼女はとてもお金持ちだ)
という文をベースに、
「彼女がどれほどお金持ちであろうとも」
という意味にするには、以下のような表現が可能です。
1. si riche qu'elle soit
si riche soit-elle (注記 a) により que を省いて倒置可能)
2. aussi riche qu'elle soit
aussi riche soit-elle (注記 a) により que を省いて倒置可能)
3. pour riche qu'elle soit
4. quelque riche qu'elle soit
5. toute riche qu'elle soit (注記 b) により性数を一致)
toute riche qu'elle est (注記 c) により直説法も可能)
quelque ~ que S + V
「quelque ~ que S + V 」で「~がどのような(いかなる)~を... しようとも」となります。「quelque ~」の部分が後ろの他動詞の直接目的(OD)になるのが特徴です。
6 | 形容詞 | 名詞 | 接続詞 | 名詞 | 接続法 |
quelque | ~ | que | S | V | |
OD | (他動詞) | ||||
どのような~を | ~が | しようとも |
例えば、
Vous faites quelques efforts. (あなたはいくらかの努力をする)
「faites」は faire (する)の直説法現在(2人称複数)。「efforts (努力)」は男性名詞で、複数形で使うことの多い名詞です。
形容詞「quelque」は「いくらかの、ある程度の」。これが、次の表現では「どのような(いかなる)」という意味に変化します。
quelques efforts que vous fassiez (あなたがどのような努力をしようとも)
「fassiez」は faire の接続法現在(2人称複数)です。
注記:
a) quelque の前に前置詞がつき、「前置詞 + quelque + 名詞」が que の後ろの
動詞に対して副詞的に働く場合もあります。
b) quelque の後ろにくる名詞が抽象名詞 chose (もの、こと)の場合は、
× quelque chose que vous fassiez
という言い方はせず、次の「quoi que S + V」を使います。
quoi que S + V
「quoi que S + V 」で「~が何を...しようとも」となります。
「quoi」は後ろの他動詞の直接目的(OD)です。
7 | 名詞 | 接続詞 | 名詞 | 接続法 |
quoi | que | S | V | |
OD | (他動詞) | |||
何を | ~が | しようとも |
例えば、
Vous faites quelque chose. (あなたは何かをする)
「quelque chose」は英語の something に相当する言葉です。この文をベースに、接続法を用いて譲歩の表現にすると、
Quoi que vous fassiez (あなたが何をしようとも)
となります。
これに類似する表現がいくつかあります。
- 変形 1 : 動詞が être で quoi が属詞となる場合
- 変形 2 : quoi 以外の場合
qui que ce soit (それが誰であれ)
qui que vous soyez (あなたが誰であれ)
où que vous alliez (あなたがどこに行こうとも)
「alliez」は aller (行く)の接続法現在(2人称複数)です。
なお、quoi と que の間が開かない一語の quoique は「...にもかかわらず」という意味の別の単語ですが、動詞はやはり接続法になります。まぎらわしいので要注意です。
quel que soit ~
「quel que soit ~」で「~がどうであれ」という意味です。
que の後ろの動詞は être で、倒置になり、属詞となる quel が前に出た形です。
疑問形容詞の quel と動詞 être は、後ろの主語にあわせて変化しますが、発音は 4 つとも同じです(「ケルク ソワ」)。
8 | 形容詞 | 接続詞 | V | S |
quel | que | soit | 男性単数 | |
quelle | 女性単数 | |||
quels | soient | 男性複数 | ||
quelles | 女性複数 |
例えば、
Vos intensions sont ~. (あなたの意図は~である)
「intension (意図)」は女性名詞ですが、複数形で使うことの多い言葉です。
この文をベースに上の表現を使うと、次のようになります。
quelles que soient vos intensions (あなたの意図がどうであれ)
que... A ou B
「que... A ou B」で動詞を接続法にすると、「A であろうと B であろうと」という意味になります。「ou (または)」とセットで使います。
A と B は対義語にするか、または「A ou non ( A であろうがなかろうが)」という形で使います。例えば、
que tu le veuilles ou non (君がそれを望もうと望むまいと)
「veuilles」は vouloir (欲する)の接続法現在(2人称単数)。「le」は文脈全体を指して、「そのことを」という意味の中性代名詞。
soit A soit B
「A にせよ B にせよ」「A または B」という意味です。
もともと「soit」は être の接続法現在(3人称単数)で、「A であろうと B であろうと」という譲歩の表現でしたが、もうこの「soit」は完全に接続詞となっています。
辞書でも être の項目ではなく、soit そのままの形で載っています。例えば、
soit directement soit indirectement (直接的にであれ間接的にであれ)
「directement (直接的に)」は副詞。もともと「direct (直接的な)」という形容詞です。
接頭語「in」は、動詞につく場合は通常「中に」または「強調」を表しますが、形容詞につく場合は「否定」を表し、「indirect」で「間接的な」。これに女性の e と ment がついて副詞になっています。
「A または B」なら A ou B と同じなため、次のように言うこともできます。
directement ou indirectement (直接的または間接的に)
もともと古くは、この「ou (または)」は、
ou A ou B
と言うのが普通でした(現代でも、二者択一であることを強調する場合はこのように言います)。また、
ou bien A ou bien B
という表現も日常的によく使われます(この場合の「bien」は語調を整えるくらいの弱い意味です)。
つまり、次の 4 つの表現がほぼ同じ意味になります。
soit directement soit indirectement
directement ou indirectement
ou directement ou indirectement
ou bien directement ou bien indirectement
なお、接続詞 et (そして)も、「A et B (A と B)」のことを、古くは
et A et B
と言っていました。これは、否定の
ni A ni B ne...(A も B も... ない)
の形と似ています。
「et」と同様、「ni」も接続詞に分類されます。
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